Thee Rang 跡地

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100年間生きた企業

 IBM Corporationが創業100周年を迎えたらしい。日々めまぐるしく変化する情報産業界にあって、この100年という数字は格別の意味があるように思われる。まずはおめでとうございます。

企業の寿命

法人は、個人と違い、物理的な寿命がない。創業者や社長が事故や病気で物故となったあとでも、次世代の人間が舵を取る事で事業の継続ができるし、発展させていくことすらできる。これは法人の大きな特徴の一つと言える。しかし、法人も個人と同じく、事故や病気に遭い一部を失ったり、時には死んでしまう事がある。どういう時かといえば、事業の継続が困難となり、会社を潰してしまう場合だ。

一般的に、企業の"旬"は良くて30年ほどだと言われる。しかもこれは相当にうまくいった場合(企業は存続しているという前提が成り立った場合)で、旬を迎えずに潰れてしまう会社はとてもたくさんある。日本でもだいぶメジャーになってきたベンチャー企業(スタートアップ)は、傾向として起業した1年目で30%程が消滅する。5年後は60%、10年ともなると75%もの企業が消滅するというデータがある。
テレビや雑誌で目にする華々しい事業家のインタビュー、彼らの豪奢で自信に満ちた振る舞いというのは、かつて彼らが空手で死地に飛び込み、歯を食いしばって必死の知恵と努力で生き残った結果、だと考えると、素直に尊敬の念を抱く。


老舗企業大国・日本

日本には老舗企業が多いと言われる。世界全体に、創業してから200年以上経過した企業は、およそ8000社ほどあると言われている。そのうち、日本の企業が占める割合はご存知だろうか?
ちなみに、ドイツには800社ほどある。アメリカには14社(アメリカ自体の歴史が新しいので仕方ない)、中国に至っては9社と言われる。じゃあ日本には?

なんと、約40%、3100社もの企業が、その創業から200年の時を経て現在も事業を行なっている。内訳は、その4割が旅館や料亭、酒造、和菓子などとなる。

創業100年を超える会社の数に至っては、10万以上あると言われる。さらに有名なところでは、世界最古の企業も日本にある。『金剛組』という、神社仏閣の建築に携わる企業だ。創業587年。1420年以上もの間、事業活動を行って来たのだった。これはもう驚くより他にない。


事業の継続には何が大切か

老舗企業の経営者に、最も大切な物を漢字一字で表すと何になるか?という質問をした結果、最も多かったのは『信』、次いで『和』であったという話がある。顧客や取引先の信頼を裏切ってしまっては、事業は立ちゆかなくなる。企業としての事業を継続するにあって、信頼というのはなにより大切なファクターなのだった。
特に日本の老舗企業というのは、その顧客を囲い込み、固定化する事で細く長く事業を継続してきた(老舗企業の資本効率は良くない事が多い)。一族経営が特色でもあるい村社会で生きていくには、経営に信を重んじるというのは納得のできる話だ。


成長を続けるのは至難

長寿企業は、長い間生き残る術に長けているが、必ずしも事業の成長を重視しているとは思えない。企業の使命は利潤の追求にある。株式会社では株主がおり、様々な要因から利潤の拡大を追求するという使命を追っている。市場で勝負を仕掛け、勝ち続けるのはただ企業を存続させる事を考えるよりはるかに困難な事だ。
"Why Companies That Are Built to Last Underperform the Market"という本がある。これによると、1917年にForbes社の選んだ優秀な100社と、1987年に選んだ優秀な100社についての話がある。
1917年に選出されたForbes100社のうち、1987年までに生き残ったのはたった39社だった。その39社の内、1987年にもForbes100として選出されたのは18社に過ぎなかった。さらにそのうちほとんどの企業が平均を下回る業績しかあげられず、平均を上回る業績を残したのは、GEとKodakのたった2社だけだった。

つまり、長期間成長を継続させるというのは並大抵の事ではない。勝負をすれば勝ちも負けもあるのが浮世というものなので、この2社だってどうなるかはわからない。現にGEは減益傾向が続いており、債務格付けも引き下げの憂き目に遭あっている。


変革の激流

進化論をとなえたダーウィンはかつて、“It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent, but the one most responsive to change.”といった。生き残るのは強い物ではなく、変化に対応できる物という意味だ。

日々めまぐるしく変わる消費者欲求、市場動向、それから各企業の勢力地図。さらにここ数十年の間に起こったITをめぐる激流に沈む事なく、もがきつつも99年間を生き延びたIBM Corporationの100年目のはじまりの日にあたり、心から祝意を申し上げたい。おめでとーございます!