Thee Rang 跡地

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さても不思議な抑止力

 土問題というのはこれは世界に初めて国家が生まれる前から存在した原始的ないざかいだが、どうやら人類に生きるための集団を形成する本能がある限り不滅の問題のようだ。人類の歴史はすなわち争いにまみれた歴史と言えるが、大小数え切れない位の戦争の原因は名誉、宗教、領土、富と主題は決まりきっている。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」といったユダヤ人のことわざを思い起こすまでも無く、人類の栄華繁栄没落消滅の歴史をわずかでも鑑みると永遠に繁栄を続けたという国や集団は存在しない。ほんの少しのシンプルな主題によって引き起こされる戦争により、そういた国家や集団が形成されたり離反したりする宿命から人類が抜け出すのは人間が水中で自由にえら呼吸できる機能を備える事と同じくらい難しいようだ。
 大小の戦争という表現をしたが大はWWⅡから小は幼稚園での原始的なイジメまで、その本質は変わらない。つまり戦争がなくならない限りいじめはなくならないし、イジメを駄目だというのならイジメの件数を最小限に止めるのに必要な事は現実の世界でいう核の抑止力のように絶対的、現実的な『パワー』が必要になると僕は思う。当然重要な事は双方がそれに匹敵する手段を持っている、という事だ。
 僕はマクロからミクロまで、戦争・争いを抑止するキーワードはこの『パワー・バランス』にあると考える。共産主義でもヒューマニズムでもないし、ジョン・レノンの『IMAGINE』でもない。これらは確かに戦争防止の為に大きな役割を果たしているだろうが、人間の良識に期待して解決するほどまだ人類の本能は戦いを忘れてはいない。かつての世界においてパワー・バランスはそれぞれの地方の最も大きな集団が握ったのであろうが、現在は科学の進歩により国の戦力という範疇を超え、地表の環境を半壊できるほどの兵器が誕生してしまった。そういう意味で、第二次世界大戦中にヒロシマナガサキに投下された二発の原子爆弾は『パワー・バランス』を人間の手から科学の手に引き継いだという点において人類の歴史における大きなターニング・ポイントのアイコンだと思っている。
 しかし現実の話はもっと複雑だ。その要因の大きなものに『資本主義』がある。現在旧西側諸国はもちろん旧東側の国々まで多くがこの資本主義の原則に則って治められている。つまり資本はパワーとなりうるのだ。そしてそのパワーを前世紀中最も手に入れたのは、資源も領土もろくにない極東の島国だった。かくして新たなるパワー・バランスの元、冷戦によって磨耗するかつての戦勝国を尻目に武力以外のパワーを手にした日本は、途中にバブル崩壊などもあったにせよ今や全世界を覆った(失礼、人口13億の大国は例外やな)資本戦争の中で大きな抑止力となっている。
 しかしカネのパワーはよっぽど強いのか、日本には(実戦で使える)軍隊がいない。それでも今までうまくやってこれたのだ。軍事予算もろくにない。武力も情報も全てかつて宗主国となり損ねた国、アメリカのおこぼれをかろうじて拾い集める事ができる程度である。それでも世界の国々に存在を知らしめ、電化製品や自動車、文化までをも広く輸出し大国の顔をしている。
 かつての日本経済華やかなりし頃、そして斜陽の現在においても日本はカネや高度技術を色々な国に提供してきた。しかし特に中国、北朝鮮、韓国の北東アジア三国は戦後保障を含め莫大な金をつぎこんでいるにもかかわらず今まさに日本の領土、領海を我が物顔で闊歩し、厚顔ぶりを発揮している。優れた企業努力と金融機能により、経済的な外圧などに日本は非常にうまく対応してきた。しかし隣国からの物理的な圧力には単純にカネでは対抗できず、ずいぶん政府も国民もいらだっている様子だ。当然だ。 
 現在は中国による領海侵犯、ロシア、韓国による領土の不法占拠、北朝鮮によるミサイル実験などの外患がネットの普及や言論の多様化などにより広く認識されるようになり、国民はカネの抑止力だけではこれらの問題を解決できない事に気づいてきている。強固なイデオロギーに基づいた武力の前に、日本の安全はアメリカ頼みという状況は非常に心もとないようにも感じる。今日発射されたミサイルはそれを再考するひとつの切掛になるだろうが、軍事的に重要な情報を全てアメリカに握られている限り切掛以上に進展する事はないだろーなあ。
  今日非常に気になるニュースが流れた。突発事件対応法という、中国のえらい会議にて提出された新法案に関するものだ。下記はその同じ法案についての異なる二つの記事である。<中国の新法案、『突発事件対応法』>

  1. http://www.asahi.com/international/jinmin/TKY200607050468.html
  2. http://www.epochtimes.jp/jp/2006/07/html/d65834.html

 同じ事柄を扱っているとは思えないほどの内容の違いだ。ちなみに前者は日本を代表する大新聞社A社、後者は中国の共産党一党体制に反発し中国の民主化を見据え徹底的に共産党政権に起因する中国の瓦解や矛盾を暴いていこうという姿勢の団体である。この二つの団体の、新法案に対する主張は間逆である。しかし、前者と後者を比べればどちらが具体的で客観的な文章かは中学生でも理解できる。日本の新聞社は中国共産党の主張をただ日本語にして掲載するだけで一見しただけでは共産党の公式HPかと思ってしまいかねない。
 武力、核、経済力というグローバルな抑止力によるパワー・バランスの他にも、この新聞社にはまだ『中国共産党』というローカルな抑止力が働いているらしい。日本は中国と戦争して負けた事はないはずだが、さても不思議なパワー・バランスもあったものだ。