Thee Rang 跡地

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ニッポン・異例の豊作

 本は国土の大部分を山岳地帯に覆われ、急勾配の河川によって形成された平野部でたくさんの人が生活している。山の幸にも海の幸にも恵まれ、厳しい冬を除いて、スーパーや食堂で少しお金を払えば常に旬の食材を口にすることができる。幸せな国だ。
 そんな国で今年、キャベツが異例の豊作となった。
 豊作と書けば喜ばしいことのように思えるが、実際はそうではない。たくさん作物が出来るということはそれだけ野菜が市場に溢れるという事で、卸値から売値までが軒並み下がるという事だ。当然農家は薄利多売となり、運送費やら保管日やらの諸経費は量に応じて増えるのだが、卸値が安いので売れば売るほど赤字になるという状況が発生する。
 そうするとどうなるか?
 大量の野菜が、ごみとして処分される。
 日本の食料自給率の問題は非常に根が深い問題だが、それがありていに現れている現象だ。日本の農家は、豊かだ。コメを作っている農家でも、野菜を作っている農家でも、田舎の国道を走らせると畑や田の中にぽつんと建っている二階建てのキレイな建物を目にする事ができる。そのような家に高級車がとまっているのも良く見られる光景だ。日本の農家は手厚く保護されており、そのガードの固さたるやかつての護送船団方式の比ではない。Noと言えない日本人などと揶揄されながらも、LDPは頑なに日本の農家を守り続け、文字通り足元から地盤を固めていき、確固たる伝統と地位を手に入れた。今回も、廃棄1kgあたり27円の交付金が支払われるという事で、これを高いと見るか安いと見るかは人それぞれといったところだろうか。
 一方、スーパーの一部や加工食品につかわれる野菜は原価の安い輸入野菜が多い。言うまでもなく、輸入野菜の多くはお隣中国から来ているのだが、かの国では環境汚染が非常に深刻な問題となっており、輸入野菜や他の食材にも多くの問題点が指摘されている。が、アメリカからの牛肉に対する扱いとはびっくりするくらいかけ離れていて、香港の人間が「毒菜」と呼ぶといわれる、内陸部からくる野菜の輸入・普及にはわが国の国民・マスコミはおどろくほど無頓着だ。少し厳しい検査基準を設けるや否や、すぐさま中国政府による日本製品の締め上げというろこつな報復手段をとられ、双方の政府に問題の根本解決に向かう姿勢を期待するのはどうやらよっぽど幸せな人でないと無理なような状況だ。
 僕は小さい頃から、コメや野菜というのは農家の人が一生懸命育ててくれたものだから大切に食べなさいと教えられた。多くの読者もそうだろう。実際、親戚の家の畑でとれた野菜のおいしさは24歳になった今でも決して忘れることがない。土の匂いと空気の匂いを吸い込んで食べるキュウリは、感動モノだった。野菜の大量廃棄というニュースは、僕のそういう価値感や美的感覚をどこか壊されているようで悲しい。農家の人たちも、丹精込めて育てた野菜を廃棄して何も感じない訳はないだろう。
 日本の農家が作った野菜が大量に廃棄され、少量が高価に出回りろくな検査基準も設けられていない外国産の野菜が安価で大量に店頭に並ぶ。日本のブルジョア農家と中国のアウトソース農家の構図はまさに世界のFLAT化なのだろうか。得してるのは誰で、損しているのは、誰なのだろう?今度、九州の田舎にいったときに、のんびり野菜をかじりながら考えてみようと思う。