Thee Rang 跡地

https://solaponz.hatenadiary.jp/ 跡地

死ぬのに、とても良い日

 『今日は死ぬのにとても良い日だ。
 あらゆる生あるものが私と共に仲良くしている。
 あらゆる声が私の中で声をそろえて歌っている。
 すべての美しいものがやってきて私の目の中で憩っている。
 すべての悪い考えは私の中から出ていってしまった。
 今日は死ぬのにとても良い日だ。
 私の土地は平穏で私を取り巻いている。
 私の畑にはもう最後の鋤を入れ終えた。
 わが家は笑い声で満ちている。
 子どもたちが帰ってきた。
 うん、今日は死ぬのにとてもよい日だ。』

 は、ネイティブ・インディアンと数十年を共にした詩人が彼らの死生観を綴ったものだ。
 僕の非常に好きな詩で、初めてみたのは高校だったか大学だったか忘れてしまったが、なにかにつけてこの"a very good day to die"というフレーズは僕の心に持ち上がってくる。例えるなら人間というのは生まれ落ちたその日から致死率100%の病を患う。それは運命という病で、その病にあらわれるいろいろな症状を総称して人生と呼ぶ。
 そこらへんを歩いている人の手帳を奪って覗いてみるとすると、色々な予定が記されているだろう。一週間先のミーティングのスケジュール、一ヶ月先のデートのスケジュール、半年先の海外旅行のスケジュール、一年先の結婚のスケジュール、…etc。人々の人生には大なり小なりKeyStoneが存在していて、人生の線分の上でその時その時最も近いKeyStoneに向かって生きる事で人生を送る。しかし、最も近いKeyStoneを見極めて慎重に、確実にそこまでたどりつく事は大事だがさらにその先のKeyStoneまで視野に入っているとチェックポイントを通過するという行為にも多くの意味を見いだす事ができるし、さらには線分の一端である死を見るという事は線分の意味を知る事の切っ掛けになるのかも知れない。 一日、一週間、一ヶ月、一年、僕なりにそれなりに頑張ってきた時間を想う時に、色々な言葉が頭の中に浮かび上がってくる。
 『あなたがただなんとなく過ごしている今日は、誰かが死ぬほど生きたかった明日*1
 『今日という日は、残りの人生の始まりの一日*2
 『あなたが生まれてくる時は、あなたは泣いて周りの人達は笑っていた。
 だから、あなたが死ぬ時は、あなたは笑って、周りは泣いているような生き方をしなさい
*3
 ネイティブ・インディアンの暮らす*4アメリカの内陸部にはまだ主立った観光地くらいにしか行ったことがないが、たまにアウトドア誌などで見るような、砂漠にテントを設営してすごす夜というのはどういう夜なんだろう?彼らは日々常々自然と会話し、動物と会話し、家族と会話し、空と会話している。彼らの生活は、彼らが暮らしてきた何百年という時間のどこを切り取っても同じ生活が存在している。目先のスケジュールに追われて周りどころか自分すら見えなくなりがちな僕らにとって、彼らの思想にふれあえる事は幸せな事だ。

*1:とある掲示板サイトにてたまに目にする名言

*2:ネイティブインディアンの死生観を表しているという詩

*3:同じく、ネイティブ・インディアンの死生観を表した詩より

*4:彼らはある種の自治権を持っていて警察や法律組織など独自の組織を形作って生活している