Thee Rang 跡地

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たたかえ贈収賄

 Gooの国語辞書曰く、賄賂とは。

1 自分の利益になるようとりはからってもらうなど、不正な目的で贈る金品。袖の下。まいない。「―を受け取る」
2 公務員または仲裁人の職務に関して授受される不法な報酬。金品に限らず、遊興飲食の供応、名誉・地位の供与なども含む
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/237498/m0u/%E8%B3%84%E8%B3%82/

 年末に、お歳暮を送ったり受け取ったりする人もいただろう。普段お世話になっている上長、また取引先などにデパートなどから缶詰やハムなどの肉、高級ゼリーなどを直送し、のしなどつけて改まる。ところが、現代ではあまりこの習慣を行う企業も少ないという。バブル崩壊、そしてリーマンショックを経て単純に体力が無いだけという事情もあるだろうが、コンプライアンス上よろしくないという事で、高額品のやりとりを拒否する企業が増えてきている様だ。ちなみに、僕が勤めている企業でも他の会社とのこういったやりとりは社内規定で禁止されている。
 これは社内でも同様で、お歳暮お中元などを上司に送った、もらったなどという話は聞いたことが無い。コンプライアンスはいいお題目で、その実この習慣をわずらわしいと感じていた人はそう少なくないと感じる。
 お中元、お歳暮は時期が決まっているし古い風習なので分かりやすい。
 本来は日頃の感謝を示す贈り物だが、翻って案件の受注を暗に要求したり、人事で便宜を図ってもらえるよう覚えを良くしようとしたりと、送る方も貰う方も、日頃の感謝以上に別の意味を含んでいるという事を承知だっただろう。
 が、これが制約されたからといって、「コンプライアンス上好ましくない」とされる、別の意味をもつ行為がなくなったわけではない。そもそも、なくなるはずもない。
 表立って堂々とやらなくなっただけで、接待の際のお土産という名目、旅行や出張のお土産という名目、先方の本人・家族の誕生日だからという名目、結婚・出産祝いという名目、仲間内で飲みに行った際のおごりおごられといった名目、その他表に出ない細かな口利きや談合などなど。相変わらず物品や金銭の交換はいたるところでおおっぴらにならない程度に行われているし、それによって便宜を図ってもらったり、案件の受注に結びついたりといった恩恵に預っている人は多い。もちろん、誰一人「どうぞ今後もよろしく」といって金銭を差し出す人など居ないし、受け取る人も居ない。
 こういった贈収賄は果たして悪だろうか?善だろうか?
 企業に入りたての新入社員や、こういった風潮をよく知らない学生などは、古臭くていやらしい行為だと嫌悪する事もあるだろう。
 しかしこれは必要悪といえる。企業活動がいかに巨大でGlobalになったとはいえ、ビジネスの基本は人間対人間だ。どんなに研究が進んでも機械に対して営業をするなんてことは絶対にありえないし、人工知能が人事考課を司るなんて事も今後起こりえないだろう。
 大きな商談を一度でも成功させた事がある人は、商談の鍵をにぎる人物が何ら自分や自分の家族と変わりのない普通の人間で、ごく普通の判断をして大金を動かしているという事を知っている。自分が部下を持ったことがある人は、上司がなんら変哲のない普通のサラリーマンだという事を知っている。
 そういった人間が何を喜ぶかというと、自分が喜ぶことと変わらない。自分と自分の家族の幸福のために、なりふり構わない手段を取ったとして不思議でもなんでもない。
 もちろんこれとは別に本人が純粋に相手に喜んでほしいと考え、実行する行為が周りから見て贈賄だと判断される場合もある。
 例えば、取引先の社長の子女が海外に留学する事になった、じゃあうちで取引している家具家財で在庫分を差し上げましょう、帰国するときは返して頂ければ結構です、なんていうケースなどだ。人のいい社長だと何も考えずにこう言い出し、先方も何も考えずに受けたりする事もあるだろうが、ライバル会社が聞くと怒るだろう。先方が公務員など公的機関ならば文句なく黒とされる所だ。
 企業活動は、全てが白か黒かで割り切れるほどシンプルではないし、人間と人間の交渉となる以上泥臭さがないとライバルを出し抜くことは難しい。
 清濁併せ呑む、ということわざがあるが、社会人として生きていく以上、節度を持ちつつ忘れてはいけない事だと思う。無意識に忌避したり恐れたりしてしまっては、自らの不利益になるばかりでなく、チームや組織に迷惑をかける事もある。
 「袖の下」「鼻薬」など賄賂の隠語は多くある。英語だと「Under the Table」などといい、時代劇だと「山吹色のお菓子」などと風流な表現もある。政治家がよく使う「実弾」は、文字通り札束の事で、この実弾を絶妙に使用する田中角栄小沢一郎などの影響力の源だった。中国など東南アジアでは賄賂は日本ほど忌避されているものではなく、必要経費や税金などのようなものだと捉えられている節もある。
 これまで無くならなかったという事は、これから無くなる事もないだろう。長い歴史の間、倫理哲学が発展してきたのは人間がそれに反する生物だからとも言える。これからGlobalで戦っていこうという気概をもつ人や企業は、こういった戦いでも是非現地企業に負けないでほしい。