有馬と草津と東北
大学の頃、西宮に住んでいたのだが、名湯有馬温泉が家から近かったので、よく通っていた。ちょうど単車にハマっていろいろ乗っていたので、家を出て大学へとつながる坂道をひたすら駆け上がり、そのまま裏山を超えて西宮有料道路へ。ひたすら長いトンネルを直進し、その先の辻を左にまがってしばらく曲がりくねった山道を行けばそこに温泉郷が現れるのだった。
関西の名湯
有馬温泉は素晴らしい温泉だった。また、温泉だけでなく、有馬は街並みがとても綺麗だ。山を切り開いたところに小川が流れ、急峻な坂道や旧跡など見所がたくさんある。僕がよく行っていた、『金の湯』という入浴施設はリーズナブルに有馬温泉に浸かれることができ、重宝していた。場所柄なのか、浴室に色とりどりのお肌をがずらーっと並んで座ってるなんて事も珍しくはなかったが、そういう人たちと談笑しながら入浴したりしてたのもいい思い出だ。『金の湯』は赤黒いお湯で、ものすごく鉄っぽい。Wikipediaによると、有馬温泉の泉質は湧出場所により異なり、塩分と鉄分を多く含み褐色を呈する含鉄強食塩泉、ラジウムを多く含むラジウム泉(ラドン泉)、炭酸を多く含む炭酸泉の3種類があるそうだが、褐色の湯が出る『金の湯』の入浴後は体中がかっかする感じがするほど温かい。どれほど温かいかと言うと、温泉に入ったあと真冬の深夜にバイクで家まで30分くらいかけて帰っても、まだ身体は温かいままだった。
関東の名湯
といえばまず草津温泉だろう。この草津も、有馬とは全然違う泉質を楽しめる。温泉街のスケールも有馬と段違いで、広い。圧巻は温泉街の中心に位置する湯畑だ。源泉を吹出す湯気の威容と、むせかえるくらいにただよう硫黄臭が否が応にも気分を盛り上げてくれる。何度いっても、ワクワクしてしまう。とにかく草津は湯量が豊富で、毎分32300リットル以上、1日にドラム缶約23万本分の自然湧出量を誇る。草津温泉の素晴らしいところは、外湯と呼ばれる、ただで入れる温泉が至る所にある事だ。設備はとても簡単なものだが、あの泉質にこれでもかという位身体をつけていると、心まで解きほぐされていくような気がしてくる。外湯めぐりといって、この外湯をいくつか周遊するのが草津のひとつの楽しみになっている(本来は忌避されてきたらしいが)。
僕は一度だけ草津に宿泊した事があるが、その時にとまった宿はペンションのような感じで、温泉を貸切で使うことができるのだった。そのときはたまたま他の宿泊客がおらず、一晩温泉を独占する事ができ、とても贅沢な体験だった。