Thee Rang 跡地

https://solaponz.hatenadiary.jp/ 跡地

今日みた光景

の雲がどんよりとしている。こころなしか街の空気は沈みがちで、電車の駅構内では人身事故の為に運転が止まっているというアナウンスが延々と流れ、人々は嫌そうな、しかしもう諦めているような顔をして振り替え輸送のアナウンスにしたがって席をたつ。車内は明るい。少し眠い。蒸し暑い毎日に歓喜しているかのような木々の緑が目に入る。電車が駅に到着し、せわしなく乗客の足音が聞こえてくる。深呼吸をしても、うっすらとガソリンの匂いがするだけでのどが痛くなる。
 外の建物の見慣れた看板の洪水が断続的に目に入ってくる。歩く人はどこか早足に思える。電線は横たわり入り乱れ、じっと道を見下ろす。放置された自転車、モーターバイクがじっとこちらをのぞきこんでいる。四角い景色の洪水。看板のさび。川のほとりに静かに佇む朱色の花。その側を走り回る子供たちの嬌声。つかれたような高校生、じっと携帯をみつめる背広の男、おとなしめの男子小学生。線路のリズム、イヤホンから漏れるリズム。最近塗り替えられたであろう赤い鉄の非常階段、コンクリートブロックの向こうに見えた猫の尻尾。高さこそ低いが一室一室にゆとりのもたれたマンションと、その下に広がる公園。初夏の河原で開かれている草野球大会。その側を通り過ぎる自転車のおばさん。湿った空気を滑らせながら静かに流れる多摩川の水面。灰色、オレンジ色、茶色、赤色、それぞれ薄く霞んだ遠くの屋根屋根。都会の空にやすらぎをもとめるように、それらの屋上に置かれた鉢植えにたたずみ鳴くカラス。友人からの電話。どこもかわらないスーパーマーケットの自転車置き場の寂寥感。布と鉄骨に覆われた建築物、あまり最近触らなくなった砂利。駐車場の土。さびた扉の蝶番。着物を着て誇らしげに歩く初老の女。視界をさえぎる扉のシール。スポーツシューズを履いた青年、ハイヒールを履いた背の高い女。くもったガラスのはめこまれた駅の壁、線路に落ちている無数のごみ。
 眠たいまぶたを開いてみても、空はまだどんよりと重い。