納豆の力

　納豆は嫌いだった。食ったことがなかったし、なんとなく、漫画ではくさい食べ物として扱われている上に関東人が食べるよく分からない食べ物という悪いイメージも手伝って、母親がやけに勧めて来たりしても頑なに断っていたし、その謎な見た目とにおいがどうも食欲を刺激してくれなかった。しかしどこのスーパーにいっても１００円ちょっとで三個パックと見た目にもリーズナブルで、なおかつあらゆるメーカーのパッケージが食べやすさや臭みの無さをぐいぐい押してきている。貧乏で日々の食事も満足にいかなかった大学時代、思わずその誘惑にまけて手にとってみたことがあった。
　家に帰って謎なだしとからしをかきまぜて、口にいれてみる。すると、なんとうまい！箸や保護フィルムにまとわりつく細い糸の扱いにこそとまどったものの、大豆のさっぱりした食後感やからしの心地よい舌への刺激が非常にまろやかで、一口でファンになってしまった。もちろんこういうスーパーにおいてあるような大衆納豆は本場水戸のイカツイ納豆（想像）などとは比べモノにならないのだろうが、栄養価も高く血液中のコレステロールを少なくするという効果も期待できるらしくいいことづくめである。まあ見た目も食べた感じも身体には良さそうだし、買い物にでたときにちょくちょく買って食べるようになっていた。
　最近、とある機会に健康診断を受けてみたらなんと身体の中にハンパない量の脂肪がたまってきている事が判明した。まだまだ基準値でいうと低い方なのだが、むかしからやせっぱちで、やせっぱちながらも頑張って筋肉をつけたりモノをたくさん食べたりして大きい体格を手に入れようとしてきたのに社会に入門した身にとってそれらはもはや完全に裏目に出た結果となった。確かに、仕事では全く動かなくなった癖に食生活はあんまり変えていない…そりゃ脂肪もたまるわけだ。というわけで、最近再び納豆をとるようにした。ちょこっと調べた所（＠ガッテン）によると、どうやらコレステロールというのは二週間納豆を食い続ければ改善が見られるらしい。というわけで毎晩納豆を食い続けている。コレステロールが改善したかどうかはわからないが、納豆というのは一パック食うと腹もひとまず落ち着くので晩飯がいらなくなったりするし、食うとしても少なくて済む。どうやら食生活の改善という意味では効果はありそうだ。ふと、昔母が食卓で食っていた、納豆のダシ＋からし＋刻みネギという黄金のコンビネーションを思い出して猛烈に食いたくなった。一口も食わないでいた昔の僕は完全にバカだった。