Thee Rang 跡地

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ロマン地学 考

 カちゃん焦ってゲロ吐いた という言葉を聞き覚えがある人はたくさんいるんじゃないだろうか。理科で習う火成岩の構成の覚え方で、り(ゅうもん岩)か(こう岩)あ(んざん岩)せ(んりょく岩)、ゲ(んぶ岩)、は(んれい岩)というのをあらわしている語呂あわせだ。習った当初はあまりに素晴らしい覚え方に感動した覚えがある。岩石というのはまあ切掛の一つに過ぎないが、僕は地学という学問が大好きだ。文系だったので物理も化学も必要なく、高校の2,3年の二年間はひたすらこの地学を習っていた。理系の学生は地学などならえない。物理と生物or科学が必須となるからだ。文系の学生も、多くは科学や生物を習う事が多い。なので地学のクラスは少人数で、学年で合わせても20人に満たなかった。
 しかし少人数だからこそ、授業は大変楽しかった。まず、双方向の授業だった。そして、地学というのはロマンのある学問だった。例えば、宇宙について勉強するときに、宇宙のできる前は何があったのか?という問いや、宇宙はどのくらい広くて外には何があるの?という問いには先生も当然答えられない。答えの無い問いというものが存在する事が新鮮で楽しかったし、ある時などは授業時間の65分を全て潰して先生と生徒達一体となって宇宙人がいるかいないかという論争が繰り広げられた(というか、いるのが前提でどういう姿をしているのかについての論争だった。)事があった。岩石が出来上がるまでの時間はどのくらい長いか、について意見を言い合った事もあった。次に大地震がくるのはどこで、どこの大学を受験すると一番安全かなどについても激論を交わした。受験において覚える事が少なくて済み、センター試験のみについては有利になるという事以外に、僕はこういう不思議の追求が楽しくて地学の授業が好きで好きで仕方がなかった。
 科学や物理と違い、地学は割と生活に近いジャンルの勉強をする。一番おもしろいと思ったのは大地についてで、次は天体について。僕は"ラブラドライト"や"ラピスラズリ"、"ムーンストーン"などの所謂「パワーストーン」が好きだ。割と集めたりもしている。べつに運が良くなるとか体調が良くなるとかそういう効果を期待している訳では決してなく、もちろんその石の美しさと、そして想像を絶する環境と時間によって形成されたその石の歴史を考えると、その石の奥に見えてくる地球の不思議に純粋に憧れてしまう。とある岩石が形成されるまでにかかる時間は、数百年から数千年もかかる。しかしさらに天体について学習するときはそれを何千倍、何万倍にした時間を平気で扱う。宇宙ヤバイ
 あとは天気図の見方なども習うし、地震についてや、古代の生物についても学習する。それに実生活でも役に立つことはたくさんあって、僕はかつてニューヨークの自然史博物館に2週間で3回も行った事があるがそのときにこの地学の知識は大いに役にたってくれた。メトロポリタン美術館に行ったときは、自分に世界史の知識がないのを恨んだがその分自然史博物館では大いに展示の意義について理解する事ができた。旅が好きなので、旅先で変わった地形をみる時にも地層や地形形成の知識で、ここは昔川があったんやなーとか、このへんの土地は水はけがよさそうで畑を作りやすいだろうなあとか考える事ができる。合っているかどうかはともかくとしてなかなか楽しい。
 そういうのを考える時間はもちろん何もしていない時間だ。何もしていないからこそそういう風に頭の中の知識を引っ張り出してきて組み立てて、なんらかの結論を曲りなりにも作り出す事ができる。あんまり毎日を忙しく過ごしすぎるとそういう風に楽しむ時間も無くなってしまうしそもそも前提知識を付ける時間も無くなってしまう。適度なお勉強は人生有意義にするためにもやっぱ大事な事だなー。
 また昔の地学の授業のようなクラスに出て、勉強できる機会がないかなあ。今の身の回りのメンバー(つまり会社のメンバーってことになる)と、歳とか役職とか全く関係なく宇宙の外側についてとか人類が月に移住する事の是非とかを討論したら案外おもしろいのかもとか思ったりした。
 重く沈みがちな会議などで困っている方々は、ウォーミングアップ的にこーいうくだらない討論を冒頭に挟んでみんなの気持ちと口を軽くする、というアイデアはどうだろうか。余計寒いか。