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藤原正彦氏の講演会へ

 週、とある偶然に恵まれなんとかねてよりこのWEBLOGで紹介していた藤原正彦氏の講演会に行ける事となった。まさかこんなチャンスがあるとは思ってなかったので企画された関係者各位には深く感謝申し上げたい所です。ありがとうございます。氏は御茶ノ水大学で教鞭を執っており、僕は友人の御茶ノ水大生にお願いして本にサインを貰ってこようかと思ったくらいのファンだ。もちろん『国家の品格』により氏の名前が世間一般に広く知らしめられるよりずっと前の話だ。
 『若き数学者のアメリカ』は、1977年に新潮社より出版された氏の最初の著作であって、そして僕が16歳の時初めて目にした氏の著作だ。主として、若かりし頃の筆者がアメリカのコロラド大学に助教授として留学する中での彼のエッセイが書かれているがその冒頭のシーンでたしか愛国心云々という描写があったような気がする。確か外国に到着したら普段意識もしたことが無かった愛国心がいきなり湧いてきたという話だったと思うが、まさかそれから30年近くたってそのキーワードによりベストセラーに繋がるとは誰が予想しただろうか。また、氏の留学時のエッセイとしては『遥かなるケンブリッジ』も色あせない名作と言って問題無いだろう。
 その頃の僕はぼんやりと将来について考え始める時期で、大学進学の事や就職のことなどいろいろモヤモヤとしていた時期だった。そんな中で氏の生々しい留学体験は世界の広さや就職の厳しさ、そして日本以外の国の人には色々な考え方があるという事を教えてくれた。コミカルに描かれていて思わず笑ってしまうシーンも多いのだが、社会の矛盾や人間の裏表などを何気に考えさせるストーリーをうまく書いており、それらは例えば人種差別や格差社会、学歴社会、お国柄の性格の違い、エリート教育、銃社会大麻体験だったりした。ああいう情緒不安定な時期にそういったいろんな広い世界の事を読むのは気分転換にもなるし、良い刺激にもなるしとてもいい体験だったと思う。
 他にもいくつかエッセイを書かれているが、その中の一つに、氏の母親(『流れる星は生きている』の藤原ていさん)が以前住んでいた満州の家を訪問しようという話があった(『祖国とは国語』、『国家の品格』いずれかに併載されていたはず)。家族と母親で満州に飛び、古い資料や地図、わずかな母の記憶を頼りに中国をさまよう一家の姿が描かれている。
 かつて満州という国が存在した時代などまるで今考えれば幻の様だ。満州国建国の正誤や必要性などは置いておいて、おそらくもう二度とああいった時代は日本には訪れないだろうと思う。今は小さな無人島や約束で取り決めた日本の領土まで他国に引きずり込まれそうになるのを我慢するのが精一杯のなんとも平和な国になった。(本当に平和かといえば案外そうでもなく、首相が共産圏のスパイを愛人にしてスパイ天国だとか揶揄されたり、地下鉄サリン事件などの凄惨なテロ、自衛隊の援助がスムーズに始まらず二次被害により多くの死傷者を出した阪神大震災などの災害や台風による大雨洪水、土砂崩れなどの災害、他国による国民の拉致とその後始末、隣国からまさに今喉元に突きつけられているミサイル問題など外にも内にも天にも脅威はたくさんあったりする。)
 いずれにしてもかつて多くの日本人が大きな希望を託し、また実際に居住していた満州国は年配の方々には色々な思い入れがあって当然だ。僕の祖父も一度満州に赴いたことがあると言っていた。特に戦闘も起こらず、近所の農家から買った野菜を仲間とかじっててのんびりしていたと言っていた。配給のタバコが余りすぎて困っていたので仕方なくのむようになったらかなりヘビースモーカーになってしまったとも言っていた。うーん僕も満州に行って祖父の足跡を辿ってみたい。まあその辺りも詳しく聞ければいいなあと思った。講演会というのは出版物を出すのとは違って結構色々な本音を聞きだす事が出来る場だ。なので質疑応答のチャンスがあれば是非チャレンジしてみたいし、本を読むだけでは読み取れない部分を是非聞かせて欲しいなー。
 つーわけで当日が楽しみで仕方がない。好きなアーティストのライブにいく直前みたいな気分だ。