Thee Rang 跡地

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国境無き記者団 vs 中国 

 境無き記者団(Reporters Without Borders)の存在をご存知だろうか。
サイト:http://www.rsf.org/
 彼らについての紹介はここに書かれている。

More than a third of the world's people live in countries where there is no press freedom. Reporters Without Borders works constantly to restore their right to be informed. Fourty-two media professionals lost their lives in 2003 for doing what they were paid to do ? keeping us informed. Today, more than 130 journalists around the world are in prison simply for doing their job. In Nepal, Eritrea and China, they can spend years in jail just for using the "wrong" word or photo. Reporters Without Borders believes imprisoning or killing a journalist is like eliminating a key witness and threatens everyone's right to be informed. It has been fighting such practices for more than 18 years.

 日本では報道の自由など当然の事だ。あまりにも自由なので行政、立法、司法のさらに上に位置づけられた第四の権力とも言われるほど力を持っている。アメリカにおいても同様で、ウォーターゲート事件などは国家権力をマスコミが動かした歴史的で象徴的な事件だった。しかしこれはどうだろう。全世界の人口の1/3以上は、報道の自由がない国に住んでいるらしい。さらに絶望的な事実として、ネパールやエリトリア、中国などではタブーの言葉、写真を使っただけでジャーナリストが牢獄で何年も過ごしているとの描写だ。かつて東ドイツの国民は西ドイツから入ってくるテレビの電波によりいかに西側が豊かな国となっているかをまざまざと見せ付けられベルリンの壁崩壊へと繋がったといわれているが、それはもう17年も前の話だというのに。
 無論、国家戦略や人道的措置としての報道規制というのは当然あって然るべきものだ。報道規制そのものが悪なのではない。ここは勘違いしてはならないところだが、報道規制により専制政治を助けたり限られた集団が私腹を肥やそうとしたり殺人を助長したり戦争を引き起こしたりという事が悪だ。弱者の口を封じ強者の弁だけをたれ流す卑怯な報道規制には、世界中のジャーナリストが立ち向かうべきものだと考えている。
 最近、中国においてyahooとgoogleが検索規制をかけているという話が持ち上がった。さらに中国は、国家が主導して特殊なファイアーウォール(通称、万里のファイアーウォール)や独自フィルタリングシステムが存在し、それにより中国で展開する企業などはメールのやり取りなどにも支障が出ているというほどの徹底ぶりだ。はじめ僕はネット上で「中国のYahooで『法輪功』、『チベット』などの単語を入れるとアクセス規制がかかる」というようなウワサを聞いたときはなるほどおもしろいジョークだなと思ったんだが、それが本当だと判った時はさすがに少し引いてしまった。インターネットは国境を取り払ったし、ネットワークの世界では人種や思想はもはや表層部分では問題にならなくなっている。例えば、モニターの向こうで英語でチャットしてるannyという女性が、キーボードを叩く姿がサリーを着ていようがチャドルをきていようが和服をきていようがチマチョゴリを着ていようが、受けて側からはあまり問題にならない、という様に。しかし特定国内において思想や統制の壁を打ち破るには至らなかった。ネット上を無数に行きかうパケットの特定パターンを排除しようという中国当局の執念は凄まじいとしかいいようがない。
 インターネットの自由度に驚いてそのツールとしてのPCに興味をもった僕にとって信じられないような話はまだまだ続く。コンテンツの内容に責任を持たされるのはISPでありWEBサーバの管理者であるらしい。チャットルームのログも含め、WEB上のあらゆる表現は60日間保存され、いつでも当局に提出しなければならない。グーグルのキャッシュは、その内容によって当局からの要請により選別削除されている。中国のISPは、『ビッグママ』と呼ばれる監視員を割り当てられていてチャットルームなどが随時監視されているという。生産と創造のアイコンであるママの名をこのような行為者につけるとはなんとも悲惨なブラック・ジョークだ。中国政府いわく、この2005年の9月に発表されたインターネット規制法は、国家機密を漏洩し、国家を転覆し、国家統一の破壊に与するような情報を禁止し国家の安全を危うくさせないように定めたという。ネット上の住人達は今度はP2P技術に目をつけ意見交換を実現しているという話だが、このようにいたちごっこが繰り返される中国の現状には体制の維持というものは凄まじいエネルギーが必要だという事を思い知らされる。そして、いつかそれが破綻する日の混乱を予感させる。
 さて、そんな中国はちょうど二年後に北京オリンピックの開幕を控えている。(余談だが以前話題になったとあるBLOGで、北京の「緑化政策」の一環として、枯れ草に緑のペンキを吹き付ける写真が合った。事実かどうかは知るところではないがかなりぶっとんだ発想である事は確かだなー、、、)。国境なき記者団はこのオリンピックに対しても警鐘を鳴らしている。
 http://www.rsf.org/article.php3?id_article=18483 にある

The Chinese police continue to jail, attack or intimidate Chinese citizens who talk to the foreign press. The most dramatic recent case was that of Fu Xiancai, an activist on behalf of people displaced by the Three Gorges dam. He has been left paralysed by an attack that took place after he left a police station where he had been threatened for giving an interview to a German TV station. The official enquiry into the attack concluded that Fu inflicted the injuries on himself in order to appear to be victim.

という記事はなんとも切ない気持ちにさせてくれる。言論弾圧の価値とは市民の命より重いらしい。
 さらに読むべきは国境無き記者団がIOCを初めとするオリンピック関係機関に提言する10の文言だ。

1. Release journalists and Internet users detained in China for exercising their right to information.
 中国で拘留されているジャーナリスト、インターネットユーザーをの情報に関する権利を認めて釈放すること。
2. Repeal article 15 of the Foreign Correspondents Guide, which restricts the freedom of movement of foreign journalists.
 外国人記者ガイドの15条を撤廃すること。15条は、外国人記者の行動の自由を厳しく制限している。
3. Withdraw censorship measures from the draft law about the management of crisis situations.
 危機的状況管理に関する法案から検閲基準を撤廃させること。
4. Disband the Publicity Department (the former Propaganda Department), which exercises daily control over content in the Chinese press.
 中国の言論を厳しく統制する宣伝部(プロバガンダ部)を解散させること。
5. End the jamming of foreign radio stations.
 海外のラジオ局の妨害をやめること。
6. End the blocking of thousands of news and information websites based abroad.
 国外にある何千ものニュースやWEBサイトの妨害をやめること。
7. Suspend the "11 Commandments of the Internet," which lead to content censorship and self-censorship on websites.
 ウェブサイト上でコンテンツを検閲させるような”インターネットにおける11の戒律”を停止すること。
8. Scrap the blacklists of journalists and human rights activists who are banned from visiting China.
 入国禁止にされている人権活動家とジャーナリストのブラックリストをスクラップにすること。
9. Withdraw the ban on Chinese TV stations using foreign news agency video footage without permission.
 中国の放送局において海外のニュースVTR、キャスターのビデオフィルムを許可なしで使用させないのをやめさせること。
10. Legalize independent organisations of journalists and human rights activists.
 ジャーナリストと人権保護運動家の独立機関を合法化すること。

 さらに、北京オリンピックをボイコットしようという運動も行われている。
http://www.rsf.org/rubrique.php3?id_rubrique=174
 スポーツと政治のあり方についてなど考えるべき事はあるだろうが、しかし一読の価値がある。日本では報道されない(なんせ愚かしい条約で取り決められている)が、中国は今後どうジャーナリズムやネット上の言論、内部の言論と戦っていくのか注目されている。