Thee Rang 跡地

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通信インフラの重要性

 京都内ではADSLの無い生活なんて考えられないという人が多いだろうが、今回帰省してみて地方ではまだまだ行き渡っているとは言い難い現実に気が付いた。フラットになりつつある世界、フラットになったはずの日本、これでいいのだろうか?
 今読み進めている"The World is Flat"という本のとある章に、以下の記述があった。

 As I have tried to argue throughout this book, a country's decision to develop when the world becomes flat is really a decision to focus on getting three basic things right: the infrastructure to connect more of your people with the flat world platform -from cheap Internet bandwidth and mobile phones to modem airports and roads; the right education to get more of your people innovating and collaborating on the flat-world platform; and the right governance-from fiscal policy to the rule of law -to manage the flow between your people and the flat-world platform in the most productive way possible.

 半世紀を優に越える歴史を誇り、世界でも五本の指に入る規模のとある多国籍企業のCEOが先日東京に来て社員に訓辞をたれていたらしいが、そのとあるCEOはこの本の筆者を自社の会合に招くほどFlat worldというキーワードを重要視しているようで、訓辞の中にもFlat worldについてのテーマを盛り込んだという。しかし上記の通り、幅広い意味でのインフラ設備というのは一企業が頑張ったり声をあげたりしたところで満足に行き渡るようなものでもなく、政府や他の援助国を頼りにしないと進みきらないというのが丸い地球での常識だ。日本ですら、僕の実家は県庁所在市にあり市内からそう遠くないにもかかわらずADSLやケーブルインターネットが使えない。以前少しの間お邪魔したタイのバンコクコンドミニアムでは、繁華街の中心地にあるプール付き警備員付きの高級な所だったがダイヤルアップしか使えず、そのダイヤルアップも時たまとぎれるといった有様だった。
 世間では、口を開けばWEB2.0やら、SNSやら、コンテンツ産業やらe-コマースやらと威勢はいいもののいまいち空虚な虚言に聞こえてしまうのはそれらによる利便性という恩恵を被る人々がまだまだ少数だからだ。少なくとも、僕はWEB2.0なんて言葉を知っている人たちは日本でコメをつくっている人たちの総数よりも少ないと思う。通信インフラを整備し、日本の隅々まで高速ネットワークで覆う事はWEBの持つスケールメリット特性を活かす事にもなるし、利便性向上の幅も都市部のネットワーク帯域を倍増させる事などに比べたら遙かに大きいハズだ。
 インターネットの生まれた国・アメリカでは、光通信ケーブルの施設でわずかの間に成り上がった企業も存在する。アメリカン・ドリームは田舎の土塊のなかにたくさん埋まっていたのだ。日本では、仕方のない事ではあるのだがこと通信という話になるとそれが携帯電話のネットワークからADSLの契約まで、ケーブルテレビなどの例外を除けばほとんど旧国営企業との煩雑な手続きが生まれてきて、まずその段階で地方でインターネットを知らない人たちが通信インフラを手に入れようとして断念する。僕は、タイはおろかまだまだ日本ですら、コンテンツ産業にうつつを抜かし足下の整地を怠って良い時期ではないように考える。コンテンツ産業会全体にとっても、長期的に見てパイを拡大していこうとするならばそのような動きを呼びかけていくべきだ。
 今、注目しているのは電化製品用の、ノーマルなコンセントでパケットをやりとりしようという試みだ。聞いた話によると、すでに実験は一定の成果を収めているらしく、通信速度も一般的なADSLをはるかに上回るものが期待できる、という話だ。コストがどれくらい大きいのかは調べてないので分からないが、この技術が実現するとなると一気に通信インフラ整備が加速し、パソコン(国産メーカーのも。)は飛ぶようにうれてコンテンツ産業は再び莫大な顧客を迎える事になるだろう。貧弱な通信インフラがソフトウェア産業コンテンツ産業の大きな壁となっていたタイのような国でも、すばらしい効果を生んでくれるようになる筈だ。
 なので、商業的にみてもそういう通信だとかe-ビジネスだとかに関わる人たちにとって通信インフラという目線で日本のビジネス全般を捕らえる事は無駄ではない。地方発送を承っている田舎の市場のホームページがFLASHで出来ていて、肝心の地方から見ようとすると重くて買い物などする気になれなくなるという機会損失はかなりのものだと思う。デザインや芸術という観点からみても、所詮はパケットによって組み立てられているので帯域が細ければそれだけ伝えられる情報というのは限られてくるから効果は小さい。つまりは動く金が小さいという事だ。海外の、日本人には思いもつかないようなセンスをもった素晴らしいデザインやアイデアを発信するWEBページも、重いが故に注目を集められないケースも幾度と無く見た。
 僕は今この文章をADSLでアップロードしている。ダウンロードしている人達は、どのような帯域でダウンロードされているだろうか。偉そうな事をのたまう僕としても、最近画像などを多様するようになり重くなってきたというのは反省すべき点であるので、そこらへんについてはお詫び申し上げます。