Thee Rang 跡地

https://solaponz.hatenadiary.jp/ 跡地

におい

 トはそれぞれの感覚器官で色々な外部情報を処理することができるが、最も人の意識が向かいやすいのが味覚と嗅覚だと聞いた事がある。そりゃそうだろう、人間が本当に猿から進化したのだとすれば猿の頃の人類?は生きていくためにその二つの感覚で安全に食べられる食料を探したのだろうから。本能が無意識に頼る感覚としてはごく自然な感覚だ。
 僕とか、多分他の人も、においによって様々な情報をINPUTされている。僕の印象に残ったにおいといえば。。。 

動物園のにおい
  色々な動物のにおいがまざりあい、なんともいえずわくわくした気持ちになってくる。どこからともなく漂ってくるおいしそうな香りに惑わされず、動物をゆっくり見て回る事がどんなに幸せなことか分かるだろうか? 
バンコクの街角のにおい
 ソウルの空港に降り立つとキムチの匂いがするという。成田空港に降り立つと醤油の匂いがするという。海外旅行で最初に感動するのは、この異国のにおいだ。吸い込む空気がもう日本のものとは違うという実感が外国を感じさせてくれ、気分を高揚させてくれる。バンコクの街をあるいていても、色々なにおいが漂っている。日本の都市ほどきれいな町並みではなく、衛生的にも清潔だとは言いがたいところも多いが総じて食べ物のにおい、生活のにおいにあふれどこかなつかしい感覚を覚える。そんなことを考えながら歩く。 
少し古びた本を開いたときのにおい
 本も旅行と同じだ。これから未知の世界、もしくは慣れ親しんだ世界にどっぷりつかろうというときににおいを意識するのはごく自然なことかもしれない。世の中には、新刊のインクの匂いのほうがいいという方もおられるらしいが僕は断然古本が好きだ。日焼けして、端っこが茶色く変色してやぶれてきていて、昔のインクが少し紙面から盛り上がっているのを指で確かめながらページをめくると、なんともいえないいにおいがする。このにおいのせいで、人は本を一度開くとなかなか閉じられないのだと思う。 
広島の街のにおい
 生まれ故郷の町のにおいは身体がおぼえているのだろうか?広島に帰ると、市民球場や広島駅などではなく、そのにおいにこそ懐かしさを覚える。幼い頃遊んだ山々、土、川、すべてのにおいが故郷を故郷たらしめる。目つぶって、どっかの都市にぽつんと立たされて、「ここどこだ?」ってきかれたとしても、広島ならなんとなく分かると言えるような気がする。多分無理やけど。 
冬が始まるときのにおい
 夏が終わって、ツーリングシーズンも、読書の秋とよばれるシーズンも、いつのまにか終わっていく。ある朝目が覚めて、ベランダの戸をガラガラっとあけるとひんやりとした冷たい空気を頬に感じて思わず深呼吸をする。金木犀の散った後にうっすらと漂う残り香というか、冷たく澄んだ空から落ちてくる新鮮な空気というか、なんともいえないすっと通った空気の味がする。
 このにおいをかぐと、もう冬だなあとうれしくなるような、がっかりするような不思議な気持ちになる。東京に着てからはこのにおいを感じていない。もう世間はすっかり寒いが、冬のにおいをかいでいないとあんまり冬という感じがしないので寂しい。