Thee Rang 跡地

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匿名書込みは誰のものか

 「電車男」「今週、妻が浮気します」この二つはいずれもインターネット上の2ちゃんねるという巨大掲示板の匿名書込みの一連の流れを元に、ドラマや映画になった作品だ。「電車男」は言うまでもなく様々なメディアで話題となり、おそらくたくさんの金を生んだ。「今週、妻が浮気します」も、いったい今どれほどドラマで進行しているのか知らないが、その衝撃的なストーリー展開と意外なラストシーン、味のあるエピソードと、web上でもかなり大きな話題となった作品だけに期待も大きいところだろう。
 ドラマを作る人間も、映画を作る人間も、プロとして仕事をしている。そんな彼らがweb上を流れる殊勝なストーリーにおいそれと飛びつき、仕事にするというのはなんとなく違和感を覚えたりもする。事実は小説より奇なり、という。実際の人々の体験や知聞が無数に集積する2ちゃんねるのようなwebからは、おそらく一日分のログからだけでもいくつものストーリーが紡ぎ出されているだろう。そこから金になりそうなストーリーを洗い出しブーム製造プロセスに乗せて出荷するというのであれば、近代のクリエイターはあまりにも短絡的な商業主義に成り下がったと思えて仕方ない。確かにwebやらweb2.0やらは、得体は知れないがなんとなく便利な物だ。インターネットによって丸い世界が再び平坦化しつつあると再発見もされている。その中で安易にその流れにのっかり美味しい汁を吸うという姿勢にはいささか疑問を覚えないでもない。
 2ちゃんねるなどで、犯罪となる書込みや犯罪行為を書き込んだものは実際に処罰の対象となり、半年に一人くらいはそういった原因でニュースになるようなことで逮捕されている人たちがいるように思われる。そう考えると匿名の書込みは明らかに書き込んだものに責任が帰すると考えられるが、権利は帰する事がないのだろうか。電車男はあまりに有名になりすぎ、その権利は守られていたかのように見える。かの主人公は、作品になることによって得た収入を全額寄付したらしが、なんとも得がたい心意気だ。
 あなたが匿名で表現した作品を、何者かが堂々と利用していたらあなたはどう考えるだろうか。匿名だったからと素直にあきらめるだろうか、それとも所有権を主張しそれを証明しようとするだろうか。
 webの裾野は広がった。以前のように、ごく少数のマニアや愛好家だけがパケットを交換する時代は終わり、いまやCPUの意味をしらない人々がmixi2ちゃんねるなどで多様な表現を示している。目的や意図は人それぞれだろうが、この新しい潮流を強権団体がいたずらにむさぼるようなことをしないような倫理観が求められるべきだと思うのだが、どうか。