Thee Rang 跡地

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リセットされる既成概念

 生のうち、誰でも一度や二度、もしくは大抵の人がそれ以上、既成概念がリセットされる瞬間を実感したことがあるだろうと思う。小さいもんだと食べ物の好き嫌いから始まり、大きいものだと宗教的な転向、などなど。何かのきっかけで自分の価値観ってこうも変わるもんなんだなーと思い知らされた事があるだろう。僕の場合だと、昔オコチャマだったころ、肉が好きで魚が嫌いという単純でおろかな二元論の世界の住人だったことがあった。が、とある瞬間、僕の親友が「魚が死ぬほど好き」と言っているのを聞いてショックを受け、僕も好きになろうという意識をもって魚を食ってみるとその味わい深さに感動して、以来魚のファンである。同じように、18歳のころ初めて一人暮らしを始めてから、野菜のおいしさが分かるようになった。自分で野菜をきって、ツナとトマトを入れてボウルに入れて食う。それまで何気なく食っていたサラダという概念がリセットされ、野菜の栄養を取る貴重な食事という概念に書き直された。
 そういう、既成概念のリセットは色々な言い方で表現される。パラダイムシフトだとか、イノベーションだとか、WEB2.0だとか、洗脳だとか、覚醒だとか、悟りだとか。一度覆された概念は、以前のものよりより強固となる特徴があって、それが社会的な概念だったりするとやおら担がれたり仰がれたりすることがあるのが特徴だ。
 この既成概念のリセット化に伴う過剰な反作用効果は非常におもしろくて、今僕が社会学部の学生などだったら是非とも卒業論文のテーマにチョイスして、一年ほど休学してじっくりと下調べをしてから取り組みたいと思うくらいだ。アメリカ留学を経て在学中の妙にアメリカナイズドされた学生や教授に既成概念の崩壊について尋ねてみてもいいし、法学部の教授に古今の判例の中で突然変異的に生まれた法解釈の前例などについて尋ねてみるのもいい。歴史上、ある国の左翼の大幹部だった人間がいきなり右翼のトップに転向していたという例について調べてみるのもおもしろい。
 ちょっとまえに騒がれたWEB2.0にしてもそうだし、現在各新聞社(サンケイ除く)がこぞって「右傾化するニッポン」を憂う現状もそうだし、1,2年前から個人の株式投資が過熱してプチバブルのようになったのもそうだし、現在の安部首相の支持率の急速な落ち込みも、だいたいそういう作用が働いていることが予想できる。
 そして予想といえば、リセット化された既成概念の過剰反作用に世の中の動きが伴うとすればリセット化される事にも世の中の動きの表出があるしリセット化される前の概念にも未来予知のヒントが隠されている。もっというと、後にリセット化される概念が作られる事自体にも未来の予兆はあるわけで、そういう切り口からみるとビジネス界で巨人と言われる人・企業の来歴を読む目も変わってくるのかもしれない。次のGoogle,Youtubeになれるヒントになるかもしれない。
 そいうのはともかく、僕は今日とある既成概念のリセット化を味わった。自宅から秋葉までバイクでいってみたところ、家を出てからお目当ての店で買い物を済ませて店をでるまでがおよそ15分だった。電車でいけば、錦糸町駅までちんたら歩いて10分、電車で8分、店まで10分、買い物5分、などなどしめて35分くらいはかかるだろう。バイクでふらっといってふらっと買うほうがはるかに時間の短縮になる。新しい道も走れて気持ちよかったし、秋葉原・浅草橋・両国・神田・御茶ノ水・九段下の各駅の位置関係というか道路のつながりかたがおよそ分かったので、錦糸町という狭い街におさまりがちな僕の日常にとっていい刺激や発見もあった。東京は電車で移動するものという既成概念がリセットされた日でしたとさ。