Thee Rang 跡地

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日本人の微笑み

 本人はいつも謎の微笑みをたたえている、親族の葬式でさえ参列者に向かって謎の微笑みを投げかける。とかつてどこかの外国人が不思議がったらしい。たしかに、日本人はことある事に微笑んでいる。なにか分からないことがあっても微笑むし、困ったことがあっても微笑む、悲しいときにも微笑む。かつて海外では、日本人は常に黙して語らず、微笑みをたたえているだけなのでさぞかし徳深い人物なのだろうと周囲から感心されることしきりだったらしいが、今や英語のみ達者で中身の無い事をぺらぺらとまくしたてる日本人が増えすぎた為、実は何も考えていなかったというのがバレてしまった、だから馬鹿にされる、英語だけを学んで海外に飛び出して恥をさらす人間が増えている、そういうのは国賊だと言っていい、というのは藤原正彦氏の著書の言葉だ。
 が、僕は不思議に思うのだが、かつての外国の人達は、一体、日本人のどこに微笑みを見たんだろうか。少なくとも、僕が社会人として企業に勤め始めてから、朝も夜も休日も、東京の街で出会う人達は誰一人として微笑んでいる人間はいない。右を向いても左を向いても誰もがこの世の終わりのようなうつろな表情で下を向いてあるいているか、どこを向いているのか分からないような余裕のない表情をしている。
 僕がたくさんの自由と貧乏を抱えていた大学生の頃は、大阪の街にいる人達は明るく見えた。例えば梅田駅なんかを歩いてみると、いろんな人が楽しそうに話をしながら笑っていたし、電車にのっても今のような重苦しい雰囲気は無かった。もちろん、通勤時間に満員電車にのるという経験なぞは無かったが、しかし東京の人達の表情と比べると明らかに電車の空気に違いがあると思う。
 なんで、日本の首都の人達があんなに自信なさそうに暗くうつむいているんだろうか?僕は未だにそれが謎だ。朝、僕は幅広の階段、幅広のホーム、山手線や東海道の起点となる巨大ターミナル駅が全て埋まるほどの人と共に通勤しているが、活き活きとした表情の人間に会うのは本当にまれだ。
 僕が初めてアメリカに行ったとき、ホテルのエレベーターで全然しらん外人にいきなり声をかけられて、てきとうにYESとか言ってると相手は楽しそうに笑いながら色々と英語をしゃべっていた。全然ききとれなかったが、僕もお愛想笑いをしながら、やっぱりアメリカ人っていうのはイメージ通りやたら明るい人達なんだろうかと感動した覚えがある。比べて、日本でエレベーターに乗るとまるで拷問のような緊迫感溢れる空気が流れる。気まずいので口を開こうものなら迷惑そうにじろっとにらまれるのがオチだ。どっちが良いとか悪いとかは難しくてよく分からないが、どっちが好きかと言われれば僕は迷わず前者と答える。例え短い時間の中でも、微笑んで過ごせるからだ。
 いろんな責任や重圧を背負っている人々が日々、色々とストレスやつらいこと、気にくわないこと、理解できないことが多いのは分かる。だがそれは、みんなそうだ。だからこそ、もう少し明るい表情で街を歩いた方が精神衛生上も結構な事だろうと思うのだが、、、どうだろう?