Thee Rang 跡地

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清く美しいスポーツ・野球

 西武ライオンズが、大学生投手に金を握らせていたというニュースが喧伝されたのは先月初め頃だっただろうか。当のピッチャーも泣きそうな顔でマスコミの前で会見するなど、まるで重大な犯罪でもあったかのような報道のされ方をするのを見て、首をかしげた人も多いだろうと思う。
 というのも、ああいった行為は公然の秘密として黙認されてきた風潮もあるし、少しでも球界に詳しい人間なら別段珍しいだとは思わないはずだ。倫理は確かに無視しているのだろうがだからといって法律を犯しているわけでもない。直接他人に迷惑をかけるわけでもない。ほとんどの日本人は高校野球のシーズンに入るたび、毎朝毎夜公共放送の電波に17やそこらの学生連中の野球の試合を垂れ流しているのを知っている。ましてや今や名実共に世界一の野球大国ニッポンで青田買いが少々行き過ぎ、倫理を踏み外したくらいで当のメディアが正義ヅラをして声を荒げて非難するのは噴飯物だ。
 野球は少年達の夢だ、という。全ての少年の希望だ、という。スポーツは高潔であるべきでプロ野球選手は聖人君子であるべきだ、という。確かにそれはそうあるべきなのかもしれないが、プロ野球界は甘くない。プロはファンありき、ファンはチームありき、チームは選手ありきだ。翻って良い選手を獲るのに最も資金力のあるチームが有利なのは野球ファンでなくても分かるところだ。
 現役の人気選手にも、今大学で活躍する選手にも、ひょっとすると高校野球にも、プロの金が入り込んでいると考えるのは上の様な日本の野球熱を考えればなんら難しい事ではない。今まで全く話題になっていなかったという事は、多分大抵のファンも承知なのだろう。僕なぞも20年ほど広島カープのファンをやっているが、もし汚い手を使ってでも良い選手を集めて、チームを強くできるのならそれはそれで構わないと考えている。が、かつて実際そうやって人材をかき集めた球団があったが、そんなに強くもならずに無駄に球界の人材を埋もれさせてリーグのバランスを欠いて、ファンを白けさせただけだった。それをしないから、僕は相変わらず堂々とカープのファンでいられる。巨悪に立ち向かう正義、分かりやすい二元論でこれにこそ夢や希望がある、と大人たちは子供達に教えるべきだろう。カープのエース、黒田の残留劇などは遠からず広島の道徳教育の教科書に載る事になるだろう。
 だから、僕はいくらプロ野球界が六大学に金をばら撒こうがなんら失望も怒りもない。どちらかというと大の大人がこぞって高校野球に熱狂し、同様にドラマチックな他のスポーツをおろそかにする事への失望の方が強い。商売とはいえ相変わらず自家撞着なメディアが、この裏金問題に飽きるのもそう遠くないことだと思っている。