品性劣悪な「お昼のワイドショー」

　最近、昼食は主に弁当を食っている。職場で弁当を食う場所にはテレビが備え付けられてあり、そこでいろんな番組が流れている。少し早めにいくといわゆる「ワイドショー」が流されており、飯を電子レンジにかけている間にたまたまその番組を見た（飯を食っている間、食い終わってからはずーっと本を読んでいるのでテレビは一見もしない）。
　画面では、悲惨なニュースが流されていた。僕も幾度と無く利用したことのある『山陽自動車道』でバスにトラックが衝突し、バスに乗っていたとある会社の社員旅行のグループの大勢が怪我をし、社長が亡くなったというニュースだった。非常に痛ましいニュースだ。バスに追突したトラックの過失であることは間違いない様だった。
　そのとき、画面はVTRから急にスタジオに移った。一同は鎮痛な表情でモニタを見つめ、言葉を失っていた（ように見えた）。そのとき、そのワイドショーで司会的な立場だった一人のアナウンサー（福澤何某というらしい）が、ぼそっと一言「管理会社が過酷な労働条件を強いていたとしたら、これまた問題になりそうですね〜」というような発言をした（仔細は忘れたが趣旨はこうだった）。それを聞いて僕は「おいおいそんな事言っていーのか、VTRで管理会社なんて一言も出てなかったようやけど、、、まあテレビでいうならきっと管理会社が悪いんだろうな」と、疑問をはさみつつも軽く流した程度にしか思わなかった。
　翌日もたまたま同じような時間に昼食を取る事になったので、いつもどおり電子レンジに弁当箱を突っ込みスイッチを入れた。そうすると例によってテレビで流れているワイドショーに目をやるのだが、山陽自動車道での交通事故の続報をしており、VTRでは加害者であるトラック運転手のコメントが流れていた。それによると、自己の原因は『タバコを取ろうとしてよそみをしてしまい、追突した』というものだった。それを見た瞬間、さてあの福澤とかいう司会者は前日の無責任発言についてどう謝るつもりなのだろうか、と密かに期待した。
　が、驚くべき事に！スタジオで２，３言その事件についてコメントが交わされた後、当たり前のように次の話題へと移ってしまった。びっくりするやらあきれるやら、とにかくかの福澤という司会者の無責任ぶり、放送関係者の無責任ぶりに驚いた。
　普通の感覚だと、何かの事件が起こっても何の根拠もなくどこかの会社のせいだとか誰かのせいだとかテレビで発言することなどありえない。よしんば発言してしまったとして、それが事実と違う事が分かれば訂正し謝罪するのが当然だし、さらに事実と違うという事を平然と報道した上で前日の発言など全くしらんぷりだ。
　もう一度いうと、福澤というアナウンサーは、多数の人間が死傷した事故について、加害者側のトラックの管理会社の責任問題をでっちあげたがそれは事実ではなく、自分の嘘についてなんら謝罪も反省もしている様子はないのだ。
　僕がたまたま弁当を温める間に見ているだけでこの調子だ。きっと彼の無責任ぶりはまだまだ他にもたくさんあるのだろう。報道は社会の木鐸たるべきで、報道局は一様にそう自称しているが、このような劣悪な番組・アナウンサーが昼食時にテレビで自分勝手な主張を垂れ流しているようでは視聴者の信頼など得られようもない。いかに既存メディアがインターネットを批判しようが、どうせでっちあげと偏見に満ちているので誰にも相手にされない。
　昔、とあるニュース番組に名物ともいえる司会者がいた。彼は色々なニュースを見るにつけ、かならず一言余計に捨て台詞を吐く癖があった。いつだったか、とあるニュースにいい加減なつっこみを入れてしまったばっかりに、とある圧力で頭を坊主に丸める羽目になった。彼もさすがにやりすぎ、制裁を受けたようだ。が、その後もその癖は治る事はなく、年間に数億円を優に稼いでおきながらも庶民の味方というような口ぶりでニュースを語り、その後数年して悠々と（？）引退していった。最もこれは夜の『ワイドショー』だったが…。
　いかに『ワイドショー』とはいえ、昼時に堂々と社会や人を欺き混乱させるかのような報道は良くない。ましてや今回は、加害者側のトラックの雇用主をあらぬ疑惑で中傷したのである。従業員が交通事故の加害者になった上にテレビで全国民に向けて中傷されたのでは少なからぬ被害も出るだろう。次からはもう、仕事がもらえなくなるかもしれない。人材も集まらなくなるかもしれない。
　件のアナウンサーは早急に謝罪し、責任を取るべきだと思う。が、それをしないのはもっと強く理解している。以前、僕はプロ野球界からアマに大量の闇金が動く話題にもマスコミはいずれ飽きると書いたが、まさにその通りとなった。それどころか野球のスターが出なくなる、伝統校はどうするなどと180度報道の向きを変えてきている有様だ。マスコミとは所詮そんなものだ。神聖な昼食時間に、品性下劣なワイドショーを少しの間でも見なければいけないのはいささか残念な事だ。