Thee Rang 跡地

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TPPをIPPと読んだ菅首相の擁護を試みる

 本の首相がTPP(環太平洋戦略的経済連携協定(Trans Pacific Partnership))をIPPと読み間違えたというニュースに衝撃を受けた。たとえ官僚が用意した原稿を棒読みするにしても、今ここまでHOTな話題のTPPを読み間違えるなど、まるでTPPを理解していなかったとしか考えられない。これは漢字の読み間違いとは全くレベルの違う問題といえる。*1漢字は自分の中で完全に意味を定着させ、なんども頭の中で反芻したことのあるものでも、最初に間違った覚え方をしていれば何かの機会に読み間違えるという事は考えられる。しかし、アルファベット(しかも3文字!)は見たら読みは明らかだし、文脈から言って頭の中に意味が定着している言葉ならまず言い間違えはありえない場面だ。
 しかし、あくまで我が国の首相の名誉のために…やむを得ない理由を考えてみた。ひょっとすると、頭の中の思考プロセス中で、別の語句と混同して間違えてしまったのかもしれない…と思い、IPPとは何があるかを調べてみた。

IPP

  • Internet Printing Protocol

遠隔地のPCからプリンタ出力出来るのはたしかに便利だ。これは疑いようが無い。首相官邸のホームネットワークでIPPの組み方でも構想してたのだろうか?東工大出の菅首相なら有り得なくもないが、世界経済と結びつくような話ではないし、首相本人が官邸のホームネットワークを構築する訳がない。有り得ないと言っていいだろう。

  • インターネット決済プロバイダー (Internet Payment Provider)

これだと分からない事もない…訳はない。まさか志位和夫への答弁中にインターネット決済プロバイダについて思考を巡らす余地があるとは到底思えない。KDDIよりフレッツの方が安いかな…なんて考えたりするのだろうか??ウィルコムからe-mobileへの乗り換えを考えていつい口に出てしまったとかだろうか。これも違うだろう。

  • インテグレーテッド・パフォーマンス・プリミティブ (IntelR Integrated Performance Primitives)

英語版Wikipediaによると、これはIntelのマルチメディア/データプロセッシングアプリケーションのためのマルチスレッド・ソフトウェアファンクションライブラリらしいが、まさか国会答弁中に趣味のマイクロプロセッサ開発やライブラリ開発で頭が一杯だったとは思えないし、そもそもあの歳の政治家がそういう趣味を持っているとは考えにくい。これも違う。

これなら分からなくもない。電力自由化の波にさらされた日本の電力業界について思いを巡らすあまり、つい日本ではあまり馴染みのない略称が口をついて出てしまったのかもしれない。もしくは、TPPによって海外からなんらかの形で安くて大量に電力が供給され、電力会社と安全保障に危機が及ぶのを危惧したのかもしれない。しかし、日本の既得権益と癒着にまみれた電力業界が海外からの安価な電力供給に危機感を覚えるのは、物理的な面から到底現実性に乏しく、どちらかというと政治家は国内の既存電力会社間の綱引きについて気をもんでいるだろう。よってTPPの事を考えていてIPPを思い浮かべるとは思えない。

  • 包括的製品政策 (Integrated Product Policy)

「IPP は、製品ライフサイクルのすべての段階を視野において、製品がもたらす環境負荷を最小化することを目指した政策である。」との事で、TPPを思考するにあたって、ひょっとして環境面での配慮があったのかと伺わせる。そういえば農水省あたりのTPP加明の影響予測に、環境面でのマイナスが数兆円含まれていた。これにしても、環境を考えるならば他にも入り口はたくさんあるだろうし、厚生大臣だったのも15年前なのでそのころIPPに傾倒していたとも聞かない。これも違うだろう。

僕にはよく理解できないが、もしポリプロピレンについて国会中に考えたりする人間ならば、おそらく政治家は志してないと思う。ので違うだろ。

  • イソペンテニル二リン酸 (Isopentenyl pyrophosphate)

どのような物質なのかも分からない。生物兵器でのテロにでも考えを巡らせていたのだろうか?

 というわけで、非常に残念ながらおそらくIPPについて考えていたからTPPをIPPと言ってしまったのではなく、単純に棒読みしていた原稿中のTの横棒が見えなかったからそういってしまっただけの事らしい。プリンタの不具合で文字がカスれて「I」になっていたとしても…許される読み間違えではない。同じ日に「法人税引き下げ」をずっと「引き上げ」と言っていたらしいが、これは単なる言い間違えと捉えても良い。しかし、頭の中で充分意味をイメージできていたはずのアルファベットの略称を読み間違えるとは、擁護のしようが無いなんとも心もとない話といえる。

*1:漢字の読み間違えで足をすくわれたのは麻生元首相だったが、菅首相厚生大臣という経歴がありながら疾病(しっぺい)を「しつびょう」と読み間違える事があった。しかも国連総会で。