Thee Rang 跡地

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温泉へ行きたい / 藤七温泉について

 後数週間から、高校生になるまで育った香川県ではあまり温泉がない。なので、漫画やテレビで紹介される温泉とはどういう物なのかよく分からなかったし、特に行きたいと感じる事も無かった。一度、塩江温泉という所に家族で行った事はあったと思うが、ちょっと熱い普通の風呂という感じで、むしろ苦痛だったのを覚えている。
 ところが大学になり兵庫県西宮市で生活を始め、せっかく近くにあるので…という理由で、有馬温泉に行くことになった。家からはバイクで20分程。大学のある山を超え、200円の有料道路を通って西に山道をはしらせた所に、突如現れる大温泉街だった。
 有馬温泉豊臣秀吉蒋介石など名だたる有名人が湯治をしに来た事で知られる、超有名な温泉地だ。ここの湯の特徴は茶色く濁った高温の湯なのだが、これがすごい。最初に行ったのは冬で、かなり冷え込む時期だったのだが、この温泉にしばらく入ると、家に帰るまで薄暗い山道をバイクで飛ばしてかえっても、まだ身体はぽかぽかと暖かかった。夜までけだるさが残ったが身体の疲れが取れ、翌朝には驚くほど身体がすっきりしていたのを覚えている。
 それ以来、温泉は大好きになった。つまり、僕も日本人の重要な特性をひとつ備えたのだ。
 最近行った中で最も感動したのは、岩手県にある藤七温泉。あまり文章で書いても伝わらないだろうが、非常に不便な山中に位置しており、決してきれいで新しいとは言えない建物が立っている。宿舎もあるが当然温泉だけ入る事もできる。内湯はこれといって変哲はないが、外湯が圧巻。全部が露天で眼前には八幡平の大パノラマが広がり、渡り廊下でいくつもの湯船が繋がっている。湯船はそれぞれ温度調整がなされており、とても熱いお湯からぬるくて長時間はいれるお湯まで分けられている。春先でも雪深く、趣がある。またここは混浴で、だいたいバスタオルやタオルをまいて入る必要があるのだが、湯船に入るともう気にしなくて良い。なぜかというと、ここは泥がものすごくて、手ですくって体中に塗りたくれるくらいの豊富な泥が溜まっている。
 泥はとてもきめ細かく、足をつけるとさらさらと舞い上がる。方や首に塗るとそこからじんじんとあたたまり、筋肉や関節の痛みを優しく和らげてくれる。 洗面台いっぱいに泥を取り、湯船につかってパノラマを眺めながら泥を顔や首に塗りたくってあたたまる。日頃の疲れやストレスなど、脇を流れる小川のせせらぎと共に山の麓まで落ちて無くなってしまう。


目の前にバス停。しかしわざわざバスでくる人などいるのだろうか?


宿舎備えつき。木の香りがしていい所だ。食事も美味しいというし、是非岩手の山菜を食べてみたかった。