Thee Rang 跡地

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TTMとTTP

 近、とある起業家からTTMとTTPという話を聞いた。起業と成長には必要不可欠な要素であるとのこと。彼は十年の日系企業でのサラリーマン生活を脱却し、最近起業してOpenした店舗が大変繁盛しており、もはや軌道に乗せた状態と言えるだろう。1週間の休暇すら年1で綿密な調整を必要とするサラリーマンな僕からしてみれば、長期休暇を何度もとってビジネスがてらEURO周遊旅行というのがなんとも羨ましい話だ。
さて、このTTMとTTP、一体なんの略かわかるだろうか?

  • TTM=Tettei Teki ni Mane ru (徹底的に真似る)
  • TTP=Tettei Teki ni Paku ru (徹底的にパクる)

だそうだ。笑。確かに起業の上では税務面、法務面で面倒な事もあるだろうし、面倒を省く為に誰かがやっている工夫は全てパクったほうがいい。また、ビジネスの成長途上においても、成功した起業がしていることを真似て、パクる事で同じ効果が得られるならば行わない手はないだろう。
この真似る、パクるというのは簡単そうに見えるがこれが意外と難しい。おそらくセンスのない人では、うまくいっている人や会社をよく知っていても、「じゃあ一体何をマネしよう?」となってオシマイだろう。
何が難しいか?
物の考え方のひとつに、「抽象化」というプロセスがある。これは、具体的な何かの行動や事実から、その一段上に隠されている心理や背景を掴みとるという行為といえる。具体的事実に囚われず、本質的な法則や性質を掴むという意味でとても大事な考え方のひとつと言えるのだが、これがなかなかできない人はできなかったりする。
喩え話が上手い人というのがたまにいる。何かを聞いて、すぐ「それって〜が〜するようなもんだよね?」とかって言う人の事だが、これは具体的事実から一端抽象化のプロセスを経て本質を理解した上で、別の具体的事実に落としこむという作業が必要になるので、これが上手い人は抽象化のプロセスが身についている人と言える。
TTM、TTPといった行為はこれと同じで、具体的事実をただ真似たりパクったりするだけでは全く徒労に終わる。重要なのは、その行為を行うことで、どういう原理でどういう効果が得られるのかを抽象化した上で理解する事にある。それを見越した真似するのであれば、先行して成功している人・企業を同じような効果を期待できるだろう。
そもそも学ぶ(まなぶ)の語源は真似ぶ(まねぶ)だと言われている。
学ぶのは真似ぶ事から始まるのであり、真似ぶ事はすなわち抽象化プロセスを経て本質的概念や原理法則を体得する事を目的としている。そのためには、ただ単に「これをやれ、あれをやれ」と押し付けるのではなく、「〜だからこれをやれ」「〜のためにあれをやれ」と具体的行動の一段上の抽象的事実を示す事が重要なのだが、相手がそれを全て理解しなくても、とりあえず繰り返し真似させる事で自覚のないうちにそういった真理や法則が身についていく事も期待できる。TTMとTTPは、旧来の日本的教育にマッチしている方針だと言えなくもない。
さて、このTTMだTTPだの語源を当たってみたかったのだが、あまり情報がWebに無い。出処は諸説あるようだが原典が不明なので記載しない。
イノベーションの多くは既存の具体的事実を、新たな抽象化作業によって繋ぎ直したり配置換えをしたりする事で実現する。TTMとTTPを心がける事で、自然と周囲の人や環境に対して抽象化して考える癖がつくようになれば、どこかのポイントで画期的なイノベーションが発生するかもしれない。
TTMとTTP、日本語の略語だと冗談のように聞こえるが、一笑する以上に一考の余地がある。