Thee Rang 跡地

https://solaponz.hatenadiary.jp/ 跡地

革命前夜を水タバコで。

 ビアが騒がしい。40年にも渡って事実上の独裁政権を運営してきたカダフィ大佐が、反体制派にじわりじわりと包囲されてきている。アメリカやEU各国が軒並み反体制派勢力に全面支援を行うに至るに、傲岸不遜のカダフィ大佐も、その権力の座で残された時間はもう長くはないだろう。

リアルタイムで革命が進行しているなんてとても信じがたい事だが、ニュースを見る限りどうやら事実である。時候柄思い出されるのは、かつての日本が経験した2・26事件だ。このときも政府要人が次々暗殺され、天皇陛下の勅命が無ければ、政府は転覆し軍部により政権が掌握されていた。たった75年前の事だ。

のちのち日本の教科書にも載るかもしれないこのリビア騒乱という大きな事件を、我々はどういうスタンスで見ればいいだろうか。現実感のないニュースが続くが、いつ自らに振りかかるかも分からないので、ちゃんと考えておきたい。(振りかかる訳がない?そんなことはない、実際に一昨年自民党政権は崩れ落ちたし、天皇制に関する議論も落ち着きがない。日本政府は大きな外患をいくつもぶらさげ、社会が覆る火種はそこら中にある。)

各社のニュースを見る限り、この騒乱には2つの問題点があると思う。

  • 1:多数の死傷者を出している事。

原因は無論武力衝突。カダフィ大佐は決して説得に応じる事はないので、反体制派は私兵を募り軍隊を組織し、政府軍&傭兵部隊を力でねじ伏せるより無い。双方の軍の隊員はもちろん、一般人・外国人にとっても生活の場が戦場になり、死傷者だけでなく多くの犯罪被害者を産む事になるだろう。アメリカによって戦力が供給され動きが加速すると、その分大量の犠牲者が出事が心配だ。

  • 2:体制の転覆が目的化している事。

生命の危険はもちろんの事、生活品質の面でこれは大きな問題となる。ひとつの国が国家として成熟するまでどのくらいの時間を要するか。旧来の政府の人・法律・財産はどうするのか。新たなリーダーは誰で、どの国をお得意様とするのか。打倒カダフィ政権が手段でなく目的となっている状態(丁度日本の政権交代がそうで、政権交代の為の公約など後々の都合でいくらでもご破算となるのを我々はよーく知っている)であり、革命後のビジョンが全く統一されていない。既に反体制派のキーマン数人に接触している国もあると報道されているが、その中にカダフィ大佐以上に独裁的な危険人物が紛れていないとも限らない。革命後は壮絶な内ゲバと権力闘争が繰り広げられるものと歴史は語っている。

各国や国連は1つめの問題に対しては素早く支援を表明し、政権を声高に非難するなど敏感に反応しているが、2に対しては現状どこがイニシアチブを取って支援していくのかが不明である。
どの国も人権保護を声高に叫びつつも、リビアは豊富な石油資源を後ろ盾として、とてつもない経済的ポテンシャルを持つ国であるだけに、テーブルの下でその利権の奪い合いに火花を散らしている事だろう。軍事介入には慎重としつつも仰々しく艦隊を展開しているアメリカ、人命救助の大義名分で過去数年間で規模が急拡大した海軍を迅速に送り込む中国など、ニュースを流し読みする限りでも大国の節操の無さがクリアに読み取れて可笑しい。
日本も人道的緊急自衛隊派遣とかっつって情報収集を兼ねて大隊を送り込めばいいのに。といってもそんな事ができる政党は日本にないし、情報も利権もおこぼれ待ちというのも日本らしくて悪くはないか。

何気なく流れるニュースを全て統合して一つずつ押さえていく事で、背後に渦巻く様々なインテリジェンスにアクセスする事ができる、と、手嶋龍一氏の講演会で伺った。アラビア中が激動にある今、巧言令色にまみれた各国のパワーゲームをじっくりと見守っていきたい。できれば、水タバコでも吸いながら。