Thee Rang 跡地

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【書評】”清濁をディープに併せ読む”月刊「FACTA」

 唯一定期購読(しかも3年分支払いで)している雑誌が、この"月刊「FACTA"。ホームページ(FACTA ONLINE)で、記事の一部とコンテンツを参照する事ができる。編集長は、元日経の論説・編集委員であり、日経ベンチャーの編集長でもあった阿部重夫氏。




FACTAは、

  • 「定期購読限定」
  • 「書店販売無し」

という非常に珍しい形態の月刊誌である。本自体は結構薄く、持ち運びは容易。毎号、100ページほどの小冊子である。ONLINEでも主だった記事を閲覧できるので、いつでもアーカイブを参照できる。



僕が阿部氏を始めて知ったのは、秋葉原で開催された手嶋龍一氏・阿部重夫氏・ジェラルド・カーティス氏の鼎談である「オバマと秋刀魚」というイベントを観覧しに行ったときだった。僕は幸運にも招待者としてタダで入れたのだが、そのとき参加者全員にこの月刊「FACTA」が配布されたのだった。
ただのパンフレットのようなもんだろう、どれ読んでみるか。と思って目を通してみて、驚いた。

他には無い強烈な特徴を持った雑誌だった。僕が感じた特徴は以下のようなものだった。

  • 普通の週刊誌や新聞とは、明らかに一線を画すDEEPな特集記事。
  • 他の雑誌では見たことのないマニアックな連載陣。
  • 既存のメディアをせせり笑うかのように、筆鋒この上なく鋭く社会現象を切る、骨太の記者達。
  • 日本経済のキーマンを名指しで取り上げ、ある時は褒めあるときは指弾する痛快な報道姿勢。
  • そして、日本経済・政治のきれいな部分、汚い部分を白日のもとに晒しあげ、読者に対して強烈に判断を求める明快さ。

毎号毎号ありがたく拝読させて頂いているが、上記のようなスタンスは一貫して替わることなく貫かれている。

この編集長が、本当に情報を厳選して厳選して、信頼のおけるもの、かつ、DEEPなものをうまく抽出して誌面へと披瀝しているのがものすごく伝わってくる。FACTAは、この一貫性という点において、他に類を見ないと言って良い。

大企業の社内政治の記事などは読んでいて本当に面白い。出歯亀根性といわれればそれまでだが、経営というものについてとても考えさせられる。これはひいては、自分たちの労働について考えているという事と同義である。以下に、今月号のトヨタに関する部分を一部抜粋。

先の経営方針の発表に先立ち社内が凍りつく人事があった。前社長の渡辺捷昭副会長(69)のクビを切ったのだ。トヨタの歴代社長は会長に昇格するのが通例だ。しかも、現会長の張富士夫氏(74)は在任期間が長く、体調も万全ではないため、張氏が相談役に退き、渡辺氏が会長に昇格すると見られていた。ところが、章男氏は渡辺氏を相談役に飛ばしたのだ。

とまあ、いとも簡単にこういった非常に繊細なインテリジェンスまで暴きだして記事にしている。トヨタの他にも、毎号毎号色々な企業の裏話がでてくる。(特に、僕のお気に入りはみずほFG/BK/CBの記事で、その書かれようは凄まじい。)

政治経済ともに本格派なのだが、金融に関連する記事は難しく感じる。恥ずかしながら商学部出身の僕ですら分からない言葉や背景がとても多く登場し、いつもボールペン片手に線引き、調べ物をしながら読む。

金融に限らず、社会現象や話題の組織・人に対してしっかりとした論説を読みたければ、断然このFACTAをオススメする。2chやBLOGも悪くはないが、「FACTA」を毎月読み通していけば、かならずやこれからのニュースを正確に読み解く大きな一助になるものと言って良いものと思われる。

もちろんニュース媒体としてスクープ性にも優れている東証みずほ証券に訴えられた際にもスクープを出して他新聞社などが追随する形をとったし、電通の社長交代の際にもFACTAのスクープが発端となったというがある。民主党が政権奪取した際も、世間はお祭り騒ぎだったが、この雑誌では以前から誌上で淡々と情勢を読み、的確に未来を言い当てていた。キムタケの振興銀についても、破綻するずいぶん前からかなり誌面を割いて特集をしていた。このあたり、情報源がいかに多様で信頼できるかを物語っている。

日々のニュースをDEEPに読み解きたい人、ほんまにおすすめ!です。*1
三年間、36冊分で29000円弱。これは自信を持って、猛烈にお買い得な買い物です、と言い切れる。