Thee Rang 跡地

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酔っ払い私録

 事をちょっと遅めに終わらせ帰宅する頃、スーツ姿の集団が赤い顔をしてそこらで固まってるのをよく見かける。気持ちよーく酔ってらっしゃって、道路に広がったりしてると邪魔なんだけども、しかし僕はあんまりイライラする事もなく、さっと避けて歩く。彼らが楽しそうならいいじゃないか。仕事の後のお酒、美味しいもんなあ。

お酒は20歳になってから。と、法律では決まっているが、だいたいの日本人は大学入学=飲酒解禁、というのがスタンダードだ。おそらく、律儀に大学二回生になるまで、20歳になるまでアルコールを控える人は皆無といっていい。田舎は特に解禁が早く、僕らの場合は高校入学が解禁日のようなものだった。クラスマッチの打ち上げに、みんなでワイワイ理解あるお宅にお邪魔して、ブワーってやるのがすごく楽しかった。

若いうちはAlcoholへの耐性が高く(あくまで自分調べ)、少々無茶な飲み方をしても大丈夫だったりする。なので、みんな結構バカバカ飲んでいたし、それぞれ性格がガラっと変わるのがものすごいおもろかった。

めっちゃ普段おとなしくて気弱なやつが、いっきなり自民党批判を繰り広げだしたり、お嬢様系でおとなしい女の子が、何を思ったかハサミを持ち出して即席散髪屋さんを始めたり。超地味系の女の子が、いきなり昨今の性の乱れについて怒り出したり、見た目オッサンなやつがやっぱり飲んだら一層オッサンになったりしていた。

僕が前後不覚になるのを初めて体験したのは、あるゼミでの飲み会だった。

調子にのって何本もお銚子一気をしていたり、ジョッキビールの一気をしていたりして、とても気分が悪くなってトイレに吐きにいった。僕の他にも一人友人がそこで死んでおり、トイレの床に座り込んでいた。そいつをひと通り笑い飛ばした後、僕はトイレからでたが店を出たところで急激に眠くなった。
少し休もうとそこらへんに座っていたら寝てしまったらしく、みなに抱えられて駅まで歩いていた。三宮から阪急で西宮に帰ったのだが、地元の駅についてもまったく歩けない。一緒にいたラグビー部の奴に、「目がさめるようにおもいっきり叩いてくれ」といってビンタしてもらったりしていたが、なんの意味もなく、しかたないので道で休みながらなんとか家までたどり着いた。
途中の記憶がほとんどない。これは、おそらく寝ていたためと思われるが、しかし記憶が無くなるという体験が初めてだったので、とにかくびっくりしてしまった。

ものすごく落ち込んだ時(恋愛がらみとか)などは、決まって「いいちこ」を呑んだ。安いし、効率よく酔えるからコストパフォーマンスが良いのだ。先輩の家にいいちこを持って行って、これをひたすら氷で割ってのんでのんで潰れて、翌朝ふらふらしながら自宅に帰る、というのがしょっちゅうあった。かわいい後輩だった、と思う。

さすがにそれ以来無茶な飲み方をしなくなり、記憶障害に陥る事もなくなった。そして、自由自在に嘔吐する訓練を積んだので、ある程度まできたら速攻で身体から抜きに行けるようにもなった。

今はもう、そんなバカ飲みする事はなくなったし、多分身体もついていかないと思う。若い頃しかできない飲み方というのが確かにあって、僕はそれを思う存分楽しんだ。んで、社会人になってそこそこ歳がいってからは、それなりの飲み方というのがあって、それも僕は愉しんでいる。だからきっと、うまく酒を愉しんでいるほうなんだと自分で思っている。

これからどんな酒をどういう風に愉しむようになるんだろうか?
酔っ払いも酔っ払うのもあまり好きではないんだが、酒は嗜好品の一つとして、これからも賢く嗜んでゆきたい。