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【書評】起業のファイナンス(磯崎哲也)

 ブタイトルは、『ベンチャーにとって一番大切なこと』。読むきっかけとなったのは渡辺千賀さんのBlogの以下のエントリ。*1

日本で起業に興味のある人はぜひ起業のファイナンスを読みましょう
http://www.chikawatanabe.com/blog/2010/11/isozaki_book.html

このなかで、ベンチャーは失敗しても怖くない!ってのが気になって、おもわず本書をとってよんでみた。しかし2200円するので、恒例のamazonのまとめポチ買いの中でも若干目立っていた。(近所の図書館では全て貸出中でした。)著者は磯崎哲也さんという方で、オビには『人気ブログ!iSOLOGUEの磯崎哲也が教える成功する会社の作り方』とある。
このiSOLOGUEというのは残念ながら僕は読んだことはなかったが、彼は早稲田大学卒業後、長銀総合研究所でコンサルタントやアナリストとして勤務したあと、1998年にベンチャービジネスの世界に飛び込んだ、とある。カブドットコムミクシィの経営、監査に関わる一方、中央大学での兼任講師もこなす公認会計士さんらしい。

ベンチャービジネスは、多くの場合イノベイティブな技術革新や斬新な発送、キレのあるビジネスアイデアによって成功するのだろうが、得てしてそのようなアウトプットをもたらす創業者というのは、経営や資金調達に鈍感であるという指摘は大変納得できるものだ。僕の経験を振り返ってみても心当たりはあるし、なにより先日大ヒットした映画、『ソーシャル・ブックマーク』でも、そのあたりはものすごく露骨に描写されていた(マーク・ザッカーバーグナップスター創設者のショーン・パーカーのコンビ。)。

この本が明らかにしている事はすごく単純だ。

この二点について、ベンチャーに全くかかわりがなかった人でもスラスラ読めるよう、平易な口調で専門用語を優しく解説してくれている。また、多くのベンチャーの成功・失敗を目の当たりにしてきたリアリティもそこここに潜んでいて、ストックオプションでよくある失敗談だとか、資金調達を待たずして『詰み』の状態になってしまうベンチャーの話だとか、創業者の持株比率が日本と米国で傾向が違うだとか、そういう手垢の匂いのする話がとても興奮する。

この本は、ベンチャーを立ち上げたことのない人が、どちらかというと成功体験より失敗体験をよりリアルにシュミレートできる一冊、と言ってよいと思われる。
そして、そうならないために最低限やっておかなければならない事、知っておかなければならない事についてかなり詳しく解説されていて、今までは専門用語や計算式を前にうなだれるしかなかった人も、「やばいなーこれやっとかなきゃな!」と前を向けるようモチベーションの維持向上をとても大切にして書かれているのが伝わってくる。

これから起業を考えている人はもちろん、周りで起業した人がいるのでちょっと起業について知っておきたい、というような人にとってもとてもおすすめの本。

大学時代の僕には、日本経済停滞の理由は日本から世界を変えるようなベンチャー企業がまったく出てこない事ではないか、という考えがあった。日本には実際に世界中の現場を変えた素晴らしい技術をもった中小企業、大企業は星の数ほどあるが、「オレはこんなにスゴいんだ!」「オレを信じるならこれを買え!」みたいな若々しさというか、迫力と説得力のある技術革新、サービス革新がなかなかうまれない。この本は、マイクロソフトFacebookTwitterが日本で生まれないのはなぜだ?という問へのひとつの示唆を含んでいるように思えた。

なので、就職活動の時分にはベンチャーを支援する企業への就職を真剣に考えていた。それだけに、胸がザワザワするのを抑えながらこの本を読了した。読了してから、きっとまた読み返すだろうから図書館で借りずに買って読んで良かったと思った。おもしろかった!おすすめ。

*1:本のタイトルが間違えてたので修正しました、すみません