Thee Rang 跡地

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汚職体験学習

 治が盛り上がっている。自民党は伝家の宝刀、内閣不信任案を抜いてはみたものの、民主党のいつものグダグダがなにやら良い方向にふれたらしく、無事否決の運びとなり、現職の菅直人総理は一層その職務へと邁進できる身となった。
民主主義の原則に照らしてみてみれば、この度の内閣不信任案は、我々が選挙で選んだ国会議員達によって否決された。つまり、国会議員たちは現職の内閣の閣僚の人たちを信任に足るとした訳で、つまりは国民の総意として、現在の内閣によって政府が運営されたほうが良い、と考えているというのが明らかになったのだった。異論はあるかもしれないが、大筋ではこの理論が通る。国民から、為政継続の承認を得た現内閣は、今後も経済、外交、復興もろもろに精一杯尽力してくれるんだろう、と信じるよりない。

…さて、日本の政治が騒がしいのはおいておいて、政治といえば汚職、という事で汚職について。

僕は日本で汚職を見たことがない。汚職に直面した事がない。ニュースでは、どこどこの市役所がプール金を使ってどうこうとか、年金の運用が実はダメダメだったとか色々聞くことがあるが、僕自身の経験として、また僕の家族や友人の経験として、汚職によって何かしらの被害や便宜を受けたという話は、寡黙にして聞いたことがない。賄賂なんて渡したこともなかったし、渡された事もなかった。

ところが、海外ではもうすでになんどもこの汚職の当人になっている。

ステーキ屋ボーイ汚職事件
学生の頃に貧乏ながら一人旅で訪れたニューヨークで、あるとき、同じドミトリーだった日本人2人と、「たまには豪勢な食事がしたい!」という事になり、50ドルの予算を握りしめて結構有名な歴史あるステーキ店へと向った。かなり人気がある店らしく、ものすごい人でごったがえしており、とてもではないか数十分で席に案内されそうな状況ではなかった。
哀れな小日本人はそこに立ち尽くして、世界の違う(ように見える)スーツのアメリカ人たちを眺めていたのだが、ふとひとりの連れがクローク係に駆け寄って、なにか英語で語りかけた。その後固い握手を交わし、僕らのほうに向き直って二人を招き入れ、荷物を預けたと思ったらすぐに席に案内された。たしかに満席だったはずなのに、ボーイがてぎわよく新しい席を作っていた。

僕は面食らい、「なんですぐ、こんな席に案内してもらえたん??」と、彼に聞いた。彼は事も無げに、こう言った。
「20$渡して、急いでるから開いている席を見つけて案内して欲しいって言っただけだよ」
と。

どうやら、握手をしていたときに10ドル札を2枚握りこみ、そのまま渡したらしかった。そのナチュラルな流れに僕は感心するやらびっくりするやらで、賄賂(この場合はやや強引にチップと読み替える事が可能か)が実践されたその状況にとても興味を持った。こうやって賄賂って使うものなんか、と感動した。

タイ警察官汚職事件
他には、タイで交通違反をしたときの事などが思い浮かぶ。
僕は一番最初にバックパッカーとして訪れたプーケットで、島内をレンタバイクで疾走して以来、タイでのドライブがとても好きになった。最近はタイにいくと毎回親戚に車をかりて走り回っているので、道もだいぶ覚えたしタイルールも完全に身についた。
しかし、とても不親切で分かりにくい、というのがタイの道路交通事情で、慣れているとはいえ右折禁止車線で右折したり、Uターン禁止でUターンしたりとヘマをやらかす事がある。
タイの交通警察は結構厳しく見張っていて、なにかの違反をしたらすぐに車をとめ、違反を告げる。

一番最初に捕まったときは、面食らった。何をいっているか分からない。無表情で怒っているようで、ドキドキした。結局国際免許を取り挙げられ警察まで出頭して取り返しに行くハメになり、罰金400バーツ(約1000円)を払って放免となった。

しかし二回目に捕まったときは、様子が違っていた。Uターン車線を直進して捕まってしまったのだが、警官はなかなか書類を作成しようとせず、しきりにこちらのほうをチラチラと見ている。どうやら、金をほしがっているようだった。
N.Yの時と違って、渡してしまうとこれはガチ賄賂だ。わけもわからず、罰金なのか?賄賂なのか?と思いつつおそるおそる国際免許に100バーツ(約260円)をはさんで差し出したところ、その警官はすばやくその紙片をポケットにしまいこみ、「さっさと行け」というジェスチャーをして僕を開放してくれた。

どうやら後で聞いたところ、タイでは警官に捕まったときにこのように小銭を払って放免とするのは半ば慣例化しており、誰でもそうする、との事だった。その言葉通り、僕は今までに一度もこの慣例に反する警官に会ったことがない。

水清ければ魚棲まず
という事で、僕はこのように汚職を当人として体験してしまったことがある。多分日本で普通に生活している分にはこういうエキサイティングな汚職事件に巻き込まれることはなっかなかないのだろうが、政治のゴタゴタをみていていふと思い出したのでメモしてみた。ちょっと前のエントリでも紹介した、山本夏彦さんの至言、「汚職は国を滅ぼさないが、正義は国を滅ぼす」という言葉は、汚職の側面を彼らしくとてもシニカルに捉えているなあ、と考えさせられるのだった。