Thee Rang 跡地

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電波時計たのむわ

 2011年3月11日に発生した東日本大震災と、それにより発生した津波により福島第一原発は電源を喪失し冷却能力を奪われ、複数の原子炉でメルトダウンを起こすに至った。水素爆発により放射性物質が広範囲に撒き散らされ、日本中で放射線量が話題になり、一時NHKのニュースで天気予報の際に一緒に東北〜関東圏の放射線量を流していた。
この事故では複数の市町村から人が避難させられるという衝撃的な事態に発展してしまったが、その影でひっそりと人々の生活に重大な影響を与えた事件があった。それは、福島第一原発からわずか十数キロに位置する大鷹鳥谷山に設置されたおおたかどや山標準電波送信所も非難区域に入ってしまった事で、標準電波の送信ができなくなってしまったのだった。

個人的な衝撃度:甚大
標準電波とは、日本の標準時を電波時計に対して送信するための電波だ。普段何気なく電波時計を使っている人もいるだろうが、こ電波時計というテクノロジーはとても画期的だ。そしてこの超画期的なテクノロジー地震原発事故であっさり使い物にならなくなった事に、僕はとてもとても大きな衝撃をうけた
究極・絶対の時計への系譜
そもそも時計の始まりとは、紐におもりをぶら下げて等幅に振る事で一定の時間を刻む、とても原子的なものだった(これを最初に考えたホイヘンスは間違いなく大天才だが)。おもりをぶら下げたひもは、静止した状態からある一報にふれる時間と、そのまた逆に振れる時間は等しいという性質がある。これを利用して、片方にふれるごとに、紐と連動しているアンクルという部品が動き、先っちょがカギ状になった、ガンギ車という歯車を一定時間で回し、秒針を進めていく。

そしてこの振り子時計の脱進機構をよりコンパクトにしたのが、現在でも機械式時計で使われているヒゲぜんまいというものだ。このヒゲゼンマイは渦巻状にまかれた細い針金で、弾力性がある。旧来の振り子が振れる動作に対応するのが、このヒゲゼンマイが片方に回転した後にもう片方に戻ろうとする動作だ。
この発明により、コンパクトな懐中時計や腕時計などの実用化が可能になった。

つまり、時計には、ある一定の幅で振れるものが必要になる。現在常用されている、電池で動くクオーツ時計という機構は、水晶に電流を流した際に得られる微振動により時を刻む。振動はこまかければこまかいほどより正確な時間を刻めるので、このクオーツ時計は、機械式時計とは比べものにならないほどの精度を誇る。

では、現代科学で時を刻む時に、もっとも最強の微振動は何かといえば・・・

原子や分子の超微振動を利用したものが、現在最強と言われている。この超微振動を原子周波数標準器という機器で測定し、それをもって正しい時を刻むのが原子時計と言われる仕組みだ。

日常に潜む超絶技術
日本中に配信されている日本標準時は、この原子時計によって測定された時間であり、その誤差は数千万年に一秒といわれる。

超高級機械式時計でも一日に数秒〜数十秒のズレがあり、クオーツ時計でも一ヶ月に10〜30秒ほどのズレが観測される。原子時計のズレの、数千万年に一秒、というのは、ほぼ絶対的な時間と言って良いだろう。
そして、何がすごいといえばこの絶対的な時間を、普通の一般人が腕時計に、壁掛け時計に、ベッドサイドの目覚まし時計に普通に活用していることだ。これは本当に人類の叡智、記念的財産だと僕は考えている。

こういう理由で、原子力発電所の事故により、この記念的財産がうまく機能しなくなってしまった事に対して、僕はおそらく人より大きな失望を抱いているのでした。

片肺飛行
おおたかどや山標準電波送信所は落雷等の事故にあいつつも、数度の立ち入りにより現在(2011/06/04)の時点では無事に電波が送信されているようだ。しかし、とても人が常駐できる状態ではないので、いつまたとまってもおかしくない。

原発事故の早期解決と、標準電波の早期安定配信を心から祈念申し上げたい。ほんま、たのむわー。