Thee Rang 跡地

https://solaponz.hatenadiary.jp/ 跡地

陰謀論は甘い囁き

 子力発電事故は未だ予断を許さない。海水による冷却が引き続き行われているが、原発周辺では高濃度の放射線が観測されているなど事態は深刻だ。北関東や東京でも、水道水中に基準値を越えるヨウ素が検出されるなど、我々の生活範囲にも影響が及んでいる。

疑う人たち
こういう状況で、やはり、というべきかなんというか、『政府は何かを隠してる!東京電力は隠蔽ばかりで重大な事実を発表しない!政府と東電はグルになって国民へまともに情報を開示していない!』とかっていう人がでてくる。よく聞くと、『天下り利権を死守するため』だとか、『個人的に便宜を受けている数名の人間が会社を牛耳っている』だとかいう人がでてくる。そして事故については予断を許さないとかいいながら、『チェルノブイリになる』とか『炉心融解が進んでいる』とか、おもいっきり予断を撒き散らす人も出てくる。

出てくるだけならまだいい。何かあればいつも出てきている。タチが悪いのは、Twitterで声高に陰謀論を叫び、拡散する人たちが少なからずいるという事だ。デマと予断と陰謀論TwitterのTL(Time Line)上に飛び交い、うんざりする人も多くいたろう。

情報隠蔽は難しい
そもそもなぜ陰謀論だと疑ってしまうのか。それは彼らが言うように、適切と考えら得る情報がタイムリーにメディアに降りてこないからと言える。結果として、たとえば水蒸気爆発の発表が何時間遅れたとか、半日たってから放射線量測定結果が公表されただとか、不満をもらし陰謀論で解決したがる。
だが、実際に組織で働いていて、隠蔽を企てた人なら分かると思うのだが、情報隠蔽というのはとっても難しい。誰にでもできるものではない。

  1. 隠匿するだけの確固たる理由
  2. それを心根から共有できる連帯感
  3. 口止めコストの支払い
  4. 発覚時のリスク享受
  5. 裏切り者の排除

を全て満たした上で、強力なリーダーシップの元に組織的に推進されなければいけない。
今の政府・電力会社にそれができるのだろうか?と考えたとき、とてもではないができるとは思えない。

情報操作批判の不当
また、政府や東電は情報操作をしていると批判している向きもあるが、これも批判に当たるものではない。なぜならその情報操作こそが彼らの仕事で、政府は国を管理するという立場上公開する情報を制限するのは当たり前のこと。最初からすべての情報をご丁寧に開示してもらえると考えるほうが不自然だ。情報を読むときは、情報操作が職業ではない所からの情報を頼りにしないと、疑心暗鬼に陥りインテリジェンスを見逃してしまう。今はネットがここまで発達しているので、容易にそれができる。それに気づいていない人たちはとてもたくさん居る事が分かった。自分たちの組織の見解を疑うよりもっと重要な事は、スタンスの違う外部意見をよく吟味してみることだ。
陰謀論は居心地が良い
陰謀論は居心地が良い。二元論的に正義と悪を明確に作り、自分が一度正義の座に位置すれば、あとは悪を攻撃していれば自分は正義の座にとどまることができる。自分が正しい人間だと錯覚できる。とても甘い囁きだ。
そして陰謀論はその時は至極もっともらしく聞こえ、今までの自分とは全く違う視点からの指摘に陶酔感すら覚えてしまう。オウム真理教が洗脳に使ったのも、日本政府が悪だくみをしているとかっていう次元の低い陰謀論だった。JRA(日本赤軍)や、ナチスドイツのホロコーストなどもその根拠はあからさまな陰謀論に満ちている。明確な敵を作る事で、身内の結束を高めコントロール性を高めるのに陰謀論はよく利用される。歴史として振り返る分には滑稽なのだが、当事者として陰謀論を冷静に見極めるのは簡単なことではない。

その他もろもろ、世に言う陰謀論はキリがない。噴飯ものの幼稚な理論であるとバカにしてはいけない。陰謀論であるという証明は悪魔の証明に似て容易でないので、いままでたくさんの陰謀論が生まれては消えてきた様に、これからもたくさんの陰謀論が生まれるだろう。ネットが発達した今、様々な地域・ジャンルのコミュニティと容易にコンタクトできるようになった。今現在有事であるという事に異論はないが、幅広く冷静に情報収集する事で陰謀論に陥るリスクを減らす事が大切だ。