Thee Rang 跡地

https://solaponz.hatenadiary.jp/ 跡地

手嶋龍一氏について

 が好きな作家・ジャーナリストの一人に、手嶋龍一氏がいる。こういう人を紹介するとき、概略はWikipediaからのコピペで済むので大変楽でよい。

手嶋 龍一(てしま りゅういち、1949年7月11日 - )は、日本の外交ジャーナリスト・作家。元日本放送協会NHK)職員で、ボン支局長・ワシントン支局長を歴任。
現在は、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授、早稲田大学政治経済学術院客員教授としてインテリジェンス論を担当し、外交・安全保障を中心に後進の指導に取り組む傍ら、外交ジャーナリスト・作家として活動。

おそらく、9・11テロの際に現地から詳細でリアルタイムなリポートを送ったという事で日本でも知名度が高い。何故この人を好きかというと、理由がある。以前、何かの広告でたまたまこの方の講演会があるのを発見して、開いている日だったので暇つぶしにはなるだろうと思い(失礼)、参加申し込みをした事が切っ掛けだった。実はタダで参加できる人数はそんなに多くなく抽選だったのだが、これもたまたま当選してしまい、多摩まで電車に揺られて聴きに行ったのだった。
そのときの日記は以前某所に書いて有るので、以下に抜粋する。テーマは、「外交ジャーナリストが語る日本の指針」。あくまで僕個人の聴講メモである。個人的に大変興味深く楽しめたので、あっさりファンになった。

  • 現在、日本がスパイ天国だという事は残念ながら事実である。世界中の情報機関からのAgentが東京を目指して日本に入国し、さまざまな情報を集め分析している。そんな中、日本が内外に対する情報機関を置かないままで果たしていいのか、日本も"長い耳"を持つべきなのだろうかという考え方もある。
  • 先に挙げた「The Good Shepherd」は、細かいところが史実に基づいており、前提知識があると何倍も映画が面白くなる。実在するイエール大学の「スカル・アンド・ボーンズ」というクラブからは数多くのパワー・エリートが輩出されており、それがダラスでの悲劇にどう繋がってくるのかというのを是非興味を持ってみて欲しい。
  • 唯一の先生と呼べるブライアン・ヘアー教授の言葉、「凡百の知識は真実に訴求する力を弱らせる」は、組織に属するジャーナリストから外交ジャーナリストとして歩みだそうとする私への餞の言葉となった。手嶋氏曰く、「私はこの言葉を境に変わった、と思います。この言葉によって立派なジャーナリストになった、と。いや、なっていなければ、先生に対して申し訳が立ちません」。
  • 超一級の情報というのはいつでも、人と人との対話によって得られる。一対一の対面で得られるものである。たとえば本を読んだらその本を理解するのに一番の方法はその筆者にあって話をすることで、そうすることでその人の"情報の機軸"が定められていく。メディアだけではダメ。本を読んで、人にあって、ご自分達自身の情報機軸を構築していかなければ、簡単に嘘に踊らされることになる。(質疑応答部分より)
  • CIAはかつてイラク大量破壊兵器があると大統領に報告し、それに基づいて行動した結果世界中から非難を浴び、敵を作る事となった。それはインテリジェンスの典型的な失敗例であり、インテリジェンスを駆使するエージェントといえども自らの人事権をもった上司、強大な権力の意に反するリポートを提出することは、難しい事である。記憶に新しいインテリジェンスの失敗例としては、Livedoorの代表をめぐるガセメール問題がある。あれも、誰もが見ても怪しいとしか思えないものだが、自他共に内外ネットワークのプロフェッショナルと称する人までもがコロっと騙され、取り返しの付かない事態を招いてしまった。情報を得る、伝えるという事にはこのような難しさがある。

つまり、主に外交に視点をおいた「インテリジェンス」に非常に造詣が深く、数々の現場を踏んできたであろうリアリティあふれる語り口が大変おもしろい。オバマ現大統領とも上院議員時代に会話したことがあると別の場所で語っていたので、ジャーナリストとしては一流だったのだろう。
この人のおもしろい所は、小説家としても才覚を発揮しているところにある。偽札問題を取扱った「ウルトラ・ダラー」は、小説という体裁を取った大規模偽札事件の種明かしのような部分があり、随所にここは事実かと勘ぐらせるような部分がでてくる。それでいて登場人物はこれでもかというくらい、クサいくらいに小説小説したエージェントで、ジェームス・ボンドの現代版のようなスーパーマンが主人公だ。この「ウルトラ・ダラー」は外務省のラスプーチンと呼ばれた佐藤優氏に、『本書は冷戦後、日本人によって書かれた初の本格的インテリジェンス(諜報)小説だ。』と高く評価されている。
どういう流れか講演会を聴いて以来僕はこの人のファンクラブ?ファンページ?のようなものの会員になっていて、たまに新刊を発行すると、サイン本プレゼントのような抽選を行う。メールでくるので、それを発見すると返信で3分ほどで応募するのだが、不思議なことにこれがほぼ100%の確率で当選してしまう。また他の講演会でも、直接お会いして書籍にサインを頂いたことがあるので、結局、自宅にある氏の著作にはほぼ全てにご本人のサインを頂いている。うれしいし、大変な名誉である事は充分に承知で光栄なのだが、非常に熱狂的なファンという訳でもなく、自分でもよく分からないがこれも何かの縁なんだろう。
氏は決してしゃべりがうまいという訳ではない。むしろ、たまにつかえたり、表情が不安げでキョロキョロしながら話すので、聴いていて「大丈夫だろうか?」と不安に思う。テレビで見ても同じで、何か不安げで落ち着かなさそうに話すので、失礼を承知で率直な印象を書かせてもらうと、「ぼんやりしている」という感じにみえる。ただし、言葉の内容はものすごく練り上げられている。語彙と言い回しが大変豊富でかつ美しく、聴いている途中で日本語同士が高次元で融合しあい、すっと心に落ちてくるという感覚に囚われた。物事を修飾するのが情景的でストーリーを内包しているとも言うべきか、とにかく言葉がとても美しい。これはおそらく物書きとして天性のものを持っているのだと思われる。先天的なものか後天的なものかはよく分からないが、大変羨ましい能力だ。
さて、さわりはこの位にして・・・と彼の得意分野であるインテリジェンスの話題に踏み入れたいところだが、結構長くなってしまったのでこのへんで。手嶋龍一の簡単な紹介でした。